地理関連定期刊行雑誌と地理学のアウトリーチ

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タイトル別名
  • Monthly journals concerning geography and outreach of geography

抄録

<p>1. はじめに/研究目的・方法</p><p>地理学のアウトリーチの一つの手段として、定期刊行されている地理学関連商業雑誌がある。日本地理学会地理学のアウト リーチ研究グループでは、今回、地理に関連が深いと考えられる商業雑誌3誌の編集長と 2019 年9月 25 日に対談を行い、そ れぞれの雑誌のコンセプトや狙い、地理学界に求めること、地理学のアウトリーチの観点からの意見をヒアリングした。その 結果に基づき、アウトリーチの観点からの今後の地理学界の方向性を考えたい。</p><p></p><p>2. 3誌の概要</p><p>古今書院発行月刊「地理」は地理学界との関連も深く学術研究内容が多い構成である。執筆者の多くが地理学界関連者であり、読者層は地理学関連の研究者・教員、地理好きな一般人で ある。発行部数 3500 部。</p><p></p><p>東方通信社発行月刊「コロンブス」は「地域経済」に中心を置き、市長や知事などの首長が読む雑誌として知られている。 発行部数 50000 部(定期購読 20000 人)。</p><p></p><p>「ナショナルジオグラフィック日本版」はアメリカの National Geographic を日本語に訳した記事がベースとなっている。発行 部数 50000 部(定期購読 40000 人)。</p><p></p><p>3. 3誌の狙いと「地理」への意識</p><p>月刊「地理」は地理の王道の雑誌とよく言われるが、それを脱したいと思っている。が、アカデミアとの関係が深くジレン マを感じている。ターゲットとしている読者は NHK「ブラタモリ」 を見ている人たちである。</p><p></p><p>「コロンブス」の狙いとしては、中央集権的ではなく、地域を掘り起こすという視点にこだわっている。地域経済をリード するという視点はあるが、経済だけに特化はしない。</p><p></p><p>「ナショナルジオグラフィック日本版」について、130 年前の 創刊時は、地理的な空白地帯を埋めていくという探検的な意味 合いが大きかったが、今は環境問題も含めて広く扱う。創刊時 の事情から名前に Geographic が入っているが、今は地理を意識 してはいない。本屋ではサイエンスの棚に置かれていることが 多いが、総合誌のつもりで作成している。</p><p></p><p>4.地理学・地理学界への意識や要望</p><p>地域の空白地帯を埋めるような研究を地理学でやっていってほしい(例えば中山間地域の無人地帯など)。地政学への対応も 検討してほしい。</p><p>地図と実生活とが結びついていない感覚を覚える。肌で感じ ないところで学問をやっているように思える。</p><p></p><p>5.地理学のアウトリーチに関連しての意見</p><p>現在の出版不況は深刻である。紙媒体を望む人がいるから続 けてはいるものの、紙媒体には将来性はないと考えている。こ れからのアウトリーチを検討するならば紙媒体以外の手段を検討する必要があるだろう。 そもそも「地理とは何か」が曖昧で分かりづらい。</p><p></p><p>6.まとめ/今後の展望</p><p>対談を終えて、地理学界としての課題は以下のように考えられる。</p><p>・ 「地理とは何か」が一般に対して見えづらい。</p><p>・ 学術研究が一般の人の生活と結びついていない(ように一般の人からは思える)。</p><p>・ 紙媒体は将来的には需要が見込まれないため、アウトリーチの観点からはウェブなどの他の媒体での活動を検討していく必要がある。</p><p>以上のことから、地理学会としても地理学評論や E journalGEO 以外の発信手段、また「地理とは何か?」を一般の人にもわ かりやくす説明する、研究成果が一般の人の生活と結びついていることを解説したような発信内容、ともに検討していく必要 があるのではないかと考える。</p><p>また、アウトリーチ研究グループでは、紙媒体以外の一つの 手段として、来たる高校地理総合必修化などを鑑み、youtube での地理関連動画教材の発信を検討している。</p><p></p><p>謝辞</p><p>今回の対談に快く参加いただき、またその結果を学会で地理学関係者と共有することにも快諾頂きました、月刊「地理」、「コロンブス」、日経 ナショナルジオグラフィックの各編集長に深く感謝いたします。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390283659866052608
  • NII論文ID
    130007822301
  • DOI
    10.14866/ajg.2020s.0_63
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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