『キャタライザー型脱墨剤』の開発及びその技術の応用展開

  • 田中 多加志
    日華化学株式会社<sup> </sup>界面科学研究所 商品開発研究部
  • 豊原 治彦
    日華化学株式会社<sup> </sup>界面科学研究所 商品開発研究部

書誌事項

タイトル別名
  • Development and Application of “Catalyzer type De–inking agent”
  • 『キャタライザー型脱墨剤』の開発及びその技術の応用展開 : ハイドロライズ型ピッチコントロール剤の開発
  • 『 キャタライザーカタ ダツボクザイ 』 ノ カイハツ オヨビ ソノ ギジュツ ノ オウヨウ テンカイ : ハイドロライズガタ ピッチコントロールザイ ノ カイハツ
  • ―Development of “Hydrolyze type Pitch control agent”―
  • ─ハイドロライズ型ピッチコントロール剤の開発─

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抄録

<p>持続可能な社会の実現において,環境保護の観点から古紙のリサイクルは重要な課題であり,製紙業界では古紙利用率の向上に努めている。一方,脱墨パルプに対する要求レベルはより高度化しており,脱墨パルプの品質を維持することが重要になってきている。</p><p>近年,省エネルギー,VOC(揮発性有機化合物)成分を含まないなど環境面からUV硬化型インク印刷物が増加している。UV硬化型インクは強固な皮膜を形成するため,従来の脱墨手法では微細化が困難であり,脱墨パルプの品質を著しく低下させる要因となっている。</p><p>また,新聞などに使用される酸化重合型インクの場合,インクの微細化は比較的容易であるが,インクのパルプへの密着性が高く剥離が困難であり,フローテーションの強化や過酸化水素などの漂白剤を増加しても再生パルプの品質は向上しないという問題があった。</p><p>今回このような問題を解決するために,界面科学と触媒科学の技術を融合した『キャタライザー型脱墨剤』を業界で初めて開発した。</p><p>今回開発した『キャタライザー型脱墨剤』は,卓越したUV硬化型インク微細化効果により,UV硬化型インク印刷物の古紙への混入による品質トラブルを低減できるようになった。一方,新聞古紙に対しては,その卓越したインク剥離効果により,脱墨剤の使用量を20%以上,工場によっては50%以上低減することができ,過酸化水素などの漂白剤の使用量低減又は使用しなくても品質の維持が可能となった。この様に新規開発品により,再生パルプの品質向上とコスト低減に大いに寄与することができた。</p><p>一方,古紙パルプを使って紙を製造する際にピッチ(チリ,汚れ)と称される物質が発生する。ピッチとなる成分としては様々なものがあるが,例えば,郵送伝票の接着剤,背糊,塗工薬剤に含まれる樹脂成分などが挙げられる。これまでのピッチコントロール剤では,樹脂を可溶化,乳化,分散したとしても,pHの変化やせん断力,硫酸バンドなどの定着剤の添加といった外的要因により,乳化,分散破壊が生じ,凝集し,巨大化し,ピッチとなる。</p><p>このピッチは,紙への付着,または,熟成タワー,濃縮機,ロール,ドライヤー等の紙の製造装置に付着し,その付着した蓄積物が脱落して紙へ再付着することにより,紙の品質低下や断紙の発生による生産性・作業性低下等の障害を引き起こす。</p><p>今回,『キャタライザー型脱墨剤』の触媒技術を応用することで,樹脂を分解することによりピッチの溶解を促し,巨大化を防止できる『ハイドロライズ型ピッチコントロール剤』を開発した。</p>

収録刊行物

  • 紙パ技協誌

    紙パ技協誌 74 (1), 26-33, 2020

    紙パルプ技術協会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (4)*注記

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