罰則の有無による行動の違いと保険加入行動との関係

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抄録

<p>罰則があるからといって,誰もが罰則の対象となる行為を慎むとは限らない.罰則があることへのこうした反応の違いは,他の行動様式と関係があるかもしれない.本論文では,罰則があることへの反応の違いと,保険加入行動との関係について,実証分析を行った.具体的に,罰則があることへの反応の違いとして用いた指標は,自動車の後席シートベルト着用率である.2008年の道路交通法改正により,後席シートベルトの着用が義務化された.ただし,実際の運用では,違反した場合に罰則が科されるのは高速道路のみであり,一般道の場合,口頭注意にとどまる.そこで,都道府県別の後席シートベルト着用率のデータを用いて,高速道路での着用率と一般道での着用率の差を,「罰則の有無による行動の違い」の指標とすることとした.法改正によってある行為に対して罰則が設けられることは,対象となる行為の背景に潜むリスクを周知する機会とも考えられる.したがって,法改正の影響に敏感に反応する人は,リスクへの感応度が高く,保険にも手厚く加入する可能性がある.分析結果では,2008年に着用が義務化されて以降,高速道路での着用率と一般道での着用率の差が大きい場合ほど,任意自動車保険に手厚く入る傾向があること,さらに,地震保険加入率も高くなることを確認した.このことは,「罰則の対象となった行為には,違反した場合に大きな危険にさらされる恐れがある」と敏感に感じ取る場合ほど,リスク回避的傾向にあり,保険に手厚く加入するようになることを示唆していると考えられる.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390285300160627968
  • NII論文ID
    130007848958
  • DOI
    10.11167/jbef.13.31
  • ISSN
    21853568
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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