弾性固体層構造におけるリーキングモード計算法

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タイトル別名
  • A method of calculating the leaking modes in elastic solid layered media
  • ダンセイ コタイソウ コウゾウ ニ オケル リーキングモード ケイサンホウ

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抄録

<p>弾性固体で形成された層構造中を伝播するleaking mode(leakage mode, leaky mode)の計算法を提案し,固結度の低い軟弱地盤上の舗装道路を模したモデルについて予測分散曲線を示す。層構造を伝播するleaking modeはRayleigh波より速い速度で伝播する分散性の波で,下方無限の最下層に波のエネルギーを放出するため,振幅を減少させながら伝播する。一方,normal mode(Rayleigh波)は内部摩擦を無視すれば,伝播に伴う波動エネルギーの減衰はなく,最下層へのエネルギーリークは生じない。減衰パラメータを表す虚数部を持った複素波数を導入してleaking modeの分散を計算することができる。また,地表でのインパルス震源に対する波形の振幅スペクトル計算に用いられる波数積分を,複素波数面上の留数計算に置き換えてleaking modeの振幅応答が部分的に得られる。上記のモデルに対して,2 Hz–100 Hzの周波数帯で位相速度の分散に対応する減衰係数,および振幅応答を計算し,leaking modeの振幅強度を震源からの距離に対して評価した。地表震源を使う表面波観測では,表層付近を高速のleaking modeが伝播し,normal modeの最高速度である最下層のS波速度より速い位相速度が分散曲線に現れる。従来の解析では,normal modeの最大位相速度が最下層のS波速度を越えられないため,S波速度の大きい最下層を深部に仮定し,観測分散曲線をすべてnormal modeとみなしてきた。しかし,震源が地表にある場合は,地震波が地下深部の最下層に到達し,表面波の形成に寄与するには長い時間が必要で,記録時間が短い波形では地震波伝播の実態が反映されていない疑いが残る。normal modeより高速で伝播するleaking modeの存在を考慮すれば,最下層のS波速度が観測分散曲線の最高速度より小さい場合も観測結果の解釈が可能である。地表付近が凍結した場所や舗装道路など,地表面近傍が高速層となる場合はleaking modeを考慮する必要がある。</p>

収録刊行物

  • 物理探査

    物理探査 73 (0), 96-116, 2020

    社団法人 物理探査学会

参考文献 (20)*注記

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