腰痛に対する鍼灸手技療法

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  • ヨウツウ ニ タイスル シンキュウ シュギ リョウホウ

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抄録

ロコモティブシンドロームは「運動器の障害」により「要介護になる」リスクの高い状態になるこ とと定義されている。ロコモの原因として、「運動器自体の疾患」と「加齢による運動器機能不全」 に大別される。腰痛では、骨粗鬆症に伴う円背、脊柱管狭窄症などによる痛みや歩行障害、身体機能 の衰えによる「閉じこもり」運動不足による「筋力低下」や「バランス能力の低下」などが原因で、 容易に転倒しやすくなることが問題となる。主に鍼灸手技療法では、これらに起因する疼痛を改善し、 寝たきり予防、また、痛みによる閉じこもりを改善することが期待できる。<br>  現在、慢性腰痛に対する鍼灸手技療法の臨床研究の現状は、鍼治療ではシャム鍼と比較し、正しい 方法論で行った場合、短期的な効果はある。しかし、他の保存療法より有効という結果もないが、未 治療と比較し鍼治療は有効とされている。また灸の研究は極めて少ないが、温熱療法では、急性腰痛 において 4日後の比較では、薬物療法などに追加することにより、腰痛の機能・痛みの程度が改善する。 さらに亜急性期では、温熱療法単独または運動療法単独と比較し、温熱療法+運動療法が有意な改善 を示していることから、灸治療も同様またはそれ以上の効果が期待出来る可能性がある。一方、手技 療法については、古典的なマッサージに加えて軟部組織のマニュピレーションなどさまざまな種類が あるが、短期成績では低出力レーザーや通常の理学療法と比較し疼痛や機能で有効であるという系統 的レビューがある。さらに、偽鍼、運動療法、姿勢教育、自己管理教育、全般的理学療法と比較し有 効であるという結果もあるが限定的である。一方ではTENSとの比較では有効性が劣るという報告も あり、結論が出ていない。 <br> 本シンポジウムでは、当科における鍼治療の実際と一連の研究成果に加え、文献的な考察を行い、 鍼灸手技療法がロコモ症候群に果たす役割について私見を述べる。

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