パーネルの亡霊ージョイスとイェイツの場合

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タイトル別名
  • The Shade of Parnell in the Works of Joyce and Yeats
  • パーネル ノ ボウレイ ジョイス ト イェイツ ノ バアイ

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抄録

本稿では、「無冠の帝王」と呼ばれた19世紀アイルランドの政治家で、自治運動の指導者であったチャールズ・スチュアート・パーネルの死が、アイルランドを代表する二人の作家ジェイムズ・ジョイスとW・B・イェイツにどのような影響を及ぼしたかについて、ゴシック的な観点を軸にして考察した。 ジョイスは、「パーネルの亡霊」というエッセイを発表し、パーネルを裏切ったアイルランド人を激しく糾弾したが、その後彼の作品からはパーネル主義が徐々に影を潜め始める。この変化は、アイルランドにおけるかつての共同体の崩壊をジョイスが認識したことと深く関わる。その認識から、ジョイスはパーネルを脱神格化・世俗化させる方向に向かった。 一方、イェイツは、貴族主義の模範としてパーネルを崇拝し、彼の死に気高い犠牲の精神を見た。イェイツは、パーネルの亡霊や葬儀を歌い、彼の不在を嘆き続けるが、最後には、祝祭的な詩によってパーネルを賛美する。ジョイスと同じように、共同体の崩壊を感じ取ったイェイツではあるが、彼はそこから失われたものの再構築に向かう。そのため、イェイツはパーネルの死を儀式化し、神話化する必要があった、と結論付けた。

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