有機スズの転写因子活性低下を介したシグナルトキシコロジー

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タイトル別名
  • Signal toxicology of organotin via decreased activity of transcription factor

抄録

<p>有機スズは船底塗料としての使用は禁止されたものの、現在でも海洋圏にもっとも豊富に存在する人工化学物質である。脂溶性が高く、さまざまな生物影響が考えられているが、低濃度の毒性はあまり報告されていない。われわれは20 nMという低濃度トリブチルスズ (TBT) がグルタミン酸受容体GluA2を発現減少させることを手がかりに、GluA2の転写因子である核呼吸因子-1 (Nuclear Respiratory Factor-1: NRF-1) の発現および転写活性を低下させることを報告してきた。NRF-1はストレス応答転写因子Nrf2とは無関係の、503個のアミノ酸からなるホモ二量体として作用する転写因子であり、ミトコンドリア呼吸鎖構成タンパク質をコードする遺伝子群など広範な遺伝子の発現調節を担うと考えられている。そのため、NRF-1阻害が有機スズ毒性のカギをにぎると想定されるものの、NRF-1の詳細な機能は明らかにされていない。そこで、HEK293T細胞においてTet-onシステムを用いてNRF-1をノックダウン (KD) した際の遺伝子発現を網羅的に解析したところ、LAMP-1をはじめとするリソソーム関連遺伝子のmRNA発現上昇が認められた。リソソーム活性を測定したところ、NRF-1 KDによりリソソーム活性の低下が認められた。これらの結果より、NRF-1 KDはリソソーム活性を低下させ、その後代償的にリソソーム関連遺伝子の発現上昇やリソソーム数増加が起きている可能性が考えられる。最後にこれらの現象がTBTでも起こるか検討したところ、おおよそ同様の現象が認められた。以上より、低濃度TBTはNRF-1活性を阻害し、その活性低下はリソソーム機能異常を引き起こすことが示唆された。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390285697591807744
  • NII論文ID
    130007898657
  • DOI
    10.14869/toxpt.47.1.0_w6-3
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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