『二原理の書』における悪と意志の関係について

書誌事項

タイトル別名
  • On the Relevance of Evil and Will in <i>Liber de duobus Principiis</i>
  • 『 ニ ゲンリ ノ ショ 』 ニ オケル アク ト イシ ノ カンケイ ニ ツイテ

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説明

<p>カタリ派による著作『二原理の書』(Liber de duobus principiis)では、二元論及びその帰結としての自由意志の否定が主張されるが、天使の堕落を例証とするその論証は、無時間的な領域においてのみ成立する論証であって、時間的存在である人間に直ちに適用することが出来ないという意味で、そもそも論証に失敗している。</p><p>その上で、カタリ派による意志理解を浮き彫りにするために、このような論理を時間的世界の人間に適用するなら、何らかの結果としての行為は善悪いずれかの原理によって与えられていた傾向性の実現であると理解することが出来る。すなわち、欲求やその抑制に関わる意志もいずれかの原理に由来するものであって自分自身に由来するものとは見做されず、善悪いずれかの傾向性の実現と見做されるのである。このことは、行為の原因となるのは外的な原理であり、意志とは関係なしに行為としての結果においてのみ善悪が判断されるというカタリ派的倫理観を示すものであると言えるだろう。</p>

収録刊行物

  • 宗教研究

    宗教研究 94 (1), 27-48, 2020

    日本宗教学会

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