デザインと看護との協働口腔ケアシミュレータと車いすクッションの開発

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抄録

<p>本学は開学以来デザインと看護との協働を教育、研究、地域貢献、大学運営に 生かしてきた。教育では、デザイン学部と看護学部の教員と学生が、混合チームで 地域の市民と一緒に課題解決に取り組んできた。 さて研究活動について私が担当している事例を紹介する。</p><p>1989 年から看護基礎教育で口腔歯科領域の教育が削除されたが、同時期に8020 運動が始まったため、高齢者の口腔内は劣悪となる中でさまざまな治療が進 められた。肺炎や絶食により、ADL の低下等が起こり、寝たきりになる患者が増え、 自宅には退院できずに病院や施設を移動していた。</p><p>こうした状況を目の当たりにし、看護基礎教育で食べる支援や口腔ケアを教授し たいと考えた。しかし、1講 90 分の演習で80 数名の学生の技術チェックを2 名の教 員ですることは難しいことがわかった。口腔ケアに関するシミュレータを探したものの、 適切なものが見つからなかった。デザイン学部の学部長に相談し、デザイン学部の 教員を紹介してもらって共同研究を開始した。2015 年のことであった。その後、国 内外の私の研究フィールドをデザイン学部の教員と一緒に視察し、課題を共有した。</p><p>ここでは、口腔ケアシミュレータや車いすの座面および、ひじ掛けクッションについ て紹介する。口腔ケアシミュレータは、これまでに、1 次モデル、2 次モデルまで開 発が進んでおり、現在はセンサの専門家も交え共同研究中である。</p><p>車いすの座面および、ひじ掛けクッションの開発は、本学の SCU 産学官金研究 交流会で北海道中小企業家同友会の方との交流から始まった。「フランスの病院 で見た高齢者の椅子を作りたい」と言ったら、地元の企業の方を紹介された。マイ 椅子は日本では、販売が難しいので車いすのクッションの話になり、「平成 26 年度 補正 ものづくり・商業・サービス革新補助金」の申請をし、採択をされた。大学の 地域連携研究を担当している事務職のサポートおよび、デザイン学部の教員の協 力を得てユーザーテストなどを終えて特許を申請し、現在、市場で販売されている。 現場のニーズに合わせて次のモデルも開発中である。</p><p>看護実践の場で看護をしていて、困ったことやこんなものがあったら、いいなと思 うことがたくさんあった。しかし、現場ではカタログから既存の製品を購入する方法 しかなかった。デザインとの協働ができる場に身を置いたことで、世界が大きく開け た。デザインとの協働は、対象者もケアを提供する者も幸せにする可能性があると 考える。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390285697610951808
  • NII論文ID
    130007925254
  • DOI
    10.34597/npc.2019.2.0_s2-2
  • ISSN
    24358460
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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