紡錘体の機能阻害を利用した簡便なマウス雄性発生胚の作出

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タイトル別名
  • Production of mouse androgenetic embryos using spindle perturbation

抄録

<p>【目的】マウス未受精卵は,減数第二分裂中期(Meta-II)で停止している。受精により第二分裂後期が開始されると,分配した姉妹染色体は一方が第二極体として放出され,他方は雌性前核を形成し,雄性前核とともに発生に使われる。精子および卵子由来のゲノムには機能的な差があり,哺乳類の個体発生には両親由来のゲノムが欠かせない。このような差異は,片親由来のゲノムをもつ胚を作出し解析することで明らかにされてきた。雄性発生胚は卵子由来のゲノムを持たない胚であり,その作出には除核や顕微授精といった熟練した手技が必要である。我々は,低濃度のノコダゾールを含んだ培地中でマウス未受精卵を単為発生刺激すると,姉妹染色体は分配されず全てが第二極体として放出され,無核の卵ができることを発見した。そこで,この現象を雄性発生胚の作出に応用することを試みた。【方法】3.5 cmディッシュに,4 mlのミネラルオイルで覆われた低濃度のノコダゾールを含む50 µlのM16培地ドロップを用意し,Meta-II卵とHTF培地で活性化した精子を入れ6時間媒精した。媒精後,5-ヒドロキシメチルシトシンおよび5-メチルシトシンの抗体を用いて免疫染色し,雄性および雌性前核を染め分けた。【結果】最適濃度である0.08 µg/mlのノコダゾールを含む培地中で体外受精すると,受精率に大きな影響を与えずに66.7 %の受精卵が雄性発生胚になることを見出した。また,この方法で作出した雄性発生胚の胚盤胞への到達率は16.7 %と,コントロールである単為発生胚の胚盤胞への到達率と同程度であった。次に,雄性発生胚ができるメカニズムを調べた。最適濃度のノコダゾールが存在すると,紡錘体は縮小し染色体分配は起こらないが,収縮環の形成誘導にはたらく因子は適切なタイミングで集積した。その後,染色体が存在する細胞膜突出部の周囲に収縮環が形成され,全ての卵染色体と紡錘体を包み込む形で極体ができることがわかった。以上の結果から,本手法を簡便な雄性発生胚作出法として紹介したい。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390285697611322880
  • NII論文ID
    130007925692
  • DOI
    10.14882/jrds.113.0_p-45
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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