地形解析による土塁斜面の侵食に関わる環境要因の考察

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タイトル別名
  • Consideration of environmental factors on erosion of earthwork slopes by topographic analysis

抄録

<p>土塁(earthwork)とは、敵や動物などの侵入を防ぐために作られた土壌や堆積物を材料とする堤防状の人工構造物をさし、古代・歴史時代の土木・軍事技術の文化財として保存されるものが多い。本研究で対象とする自然教育園内に点在する土塁は、室町時代以降様々な利用履歴を持っており、都内では数少ない貴重な二次的自然として現在まで保存されている(桜井,1981)。岡本(1984)によれば、 園内において度々発生する土塁斜面の崩落が、天然記念物である周辺の樹木等に対して影響を与え始めていることが指摘されている。また、川井ほか(2013)などによれば、こうした土塁形状の変化には複数の環境要因が関係していると指摘しており、今後更なる形状の変化が予想される。そこで、本研究では園内における土塁形状の変化要因の解明を目的とし、DEMを用いた地形解析をおこなうことで、土塁形状の現況把握と形状変化に関わる環境要因を考察した。地形解析においては、2010 年に実施されたレーザー測量により取得された 0.5mDEMを用いて、園外周土塁・園内部土塁・館跡土塁の各土塁の断面特性の把握および傾斜量・傾斜方向の解析をおこなった。</p><p></p><p>園外周土塁では、岡本(1984)により報告される補修の施された土塁以外の全ての箇所、園内部土塁では園中央の台地上に1か所、館跡土塁では東側斜面沿いの一部において、向かい合う両斜面が非対称的な形状を呈していた。傾斜量の解析により斜面平均角度が30°以上の急崖に分類された箇所は、園外周土塁では、岡本(1984)により報告のある土塁の南北両斜面と外周土塁の南東側斜面で確認された。園内部土塁では、園中央部に位置する複数の土塁の東側および南側斜面に確認された。館跡土塁では、南側斜面の一部に確認された。傾斜方向の解析では、園外周土塁北東部の南北両斜面と園南部に分布する一部の園内部土塁において稜線沿いに大きく攪乱している箇所が確認された。</p><p></p><p>本研究の結果から、先行研究による明確な整形履歴が存在する箇所以外の土塁斜面において、局所的な急崖の形成や斜面方向の攪乱が確認された。特に園外周土塁沿いで現地調査をおこなった結果、急崖が形成されている斜面周辺に樹木の根上がりや倒木が確認された。こうした現象の発生要因としては、森林内部の林分構造(星野 ほか、2017)や林床における土質構造(土井ほか、2006)との関係が指摘されている。 </p><p></p><p></p><p></p><p>引用文献</p><p></p><p>岡本東三(1984)自然教育園(旧白金御料地)外周土塁の調査.自然教育園報告 15:33-42.</p><p></p><p>川井伸郎・村田智吉・田中治夫(2013)自然教育園における歴史的な人為からの土壌の自然再生.自然教育園報告 44:25-36.</p><p></p><p>桜井信夫(1981)『自然教育園』.東京都公園協会監修・東京公園文庫 25,郷学舎. p88.</p><p></p><p>土井裕介・森章・武田博清(2006)御嶽山亜高山帯老齢林における林床基質が林分構造に与える影響.日本森林学会大会発表データベース117(0): 379.</p><p></p><p>星野大介・久保喬之・黒田誠・勝野幸男・酒井武(2017)ササのある木曽ヒノキ天然生林の林分構造.第128 回日本森林学会大会学術講演集.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390286426520176512
  • NII論文ID
    130007949224
  • DOI
    10.14866/ajg.2020a.0_135
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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