江戸時代末期に日本近海で外国船に観測された台風

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  • Tropical cyclones observed by foreign ships near Japan during late Edo era

抄録

<p>はじめに</p><p> 日本の過去の気候を明らかにするには、長期の気象観測データが欠かせない。現在、世界中で過去の気象データを復元する「データレスキュー」が取り組まれている。日本での気象観測は1872年に函館ではじまった。それ以前も気象測器を用いた観測はあるが、個人が短期間実施してきたものが多い(Zaiki et al. 2006)。このため、江戸時代の気候は主に古文書の記録に頼った調査がほとんどであった(山川1993)。</p><p></p><p>江戸時代日本は鎖国をしていた一方で、欧米各国は大航海時代であり、多くの艦船がアジアに進出していた。19世紀になると気象測器を積んだ艦船が日本近海にも数多く航行するようになった。本研究はイギリスとアメリカの艦船の航海日誌を入手し、記載された気象データをもとに1863年8月の薩英戦争時と1853年7月にペリー艦隊が観測した台風に着目し(Kubota et al. 2020 submitted)、報告する。</p><p></p><p>2.  データ</p><p></p><p>  1863年の薩英戦争と1864年の下関戦争に参戦したイギリス海軍の航海日誌をイギリス水路部,公文書館で入手し気象データをデジタル化した(図1)。1853年,1854年に日本に来航した10隻のペリー艦隊の航海日誌をアメリカ公文書館で入手しデジタル化した。</p><p></p><p>3.  結果</p><p>薩英戦争が開戦した翌朝1863年8月16日午前4時に軍艦Euryalusが990.6hPa(補正済み)を鹿児島湾で記録した。風は風力10に達し、時計回りに風向が変化した。東シナ海に展開した3隻と長崎に停泊中の2隻のイギリス軍艦の気圧,風向,風速変化から台風は8月15日−16日にかけて東シナ海を北上し、九州の西を通過したことが明らかとなった(図2)。これまでの歴史資料には薩英戦争中に台風が通過した記録は見当たらない。薩英戦争の戦況に台風がどの程度影響を与えたのか今後調査が必要である。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390286426520203264
  • NII論文ID
    130007949136
  • DOI
    10.14866/ajg.2020a.0_104
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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