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- 谷内 稜
- Department of Physics, University of York 理化学研究所仁科加速器科学研究センター
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- Doornenbal Pieter
- 理化学研究所仁科加速器科学研究センター
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- 櫻井 博儀
- 理化学研究所仁科加速器科学研究センター 東京大学理学系研究科
書誌事項
- タイトル別名
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- Doubly Closed Shell of Nickel-78
- チュウセイシ ガ キワメテ オオイ ニッケル 78 ゲンシカク ノ ソフト ナ ニジュウヘイカク
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説明
<p>陽子と中性子の二種の粒子で構成される原子核というシステムは,電子軌道と同様に殻構造をもつことが知られている.原子核が閉殻構造となるとき,周辺の同位体原子核よりも安定となる.具体的には,核子の結合エネルギーが大きく,半減期が相対的に長く,また第一励起エネルギーが高くなる.周辺の原子核よりも安定となる同位体の陽子数,または中性子数は歴史的に魔法数(Magic Number)と呼ばれ,2,8,20,28,50,82...であることが知られている.特に陽子・中性子数が共に魔法数となる原子核はその二重閉殻の性質ゆえに励起エネルギーが顕著に高くなることが知られ,二重魔法数核と呼ばれる.</p><p>近年の加速器技術の進歩により,中性子過剰で短寿命な原子核を生成し詳しく研究できるようになり,それまで不変だと考えられていた魔法数はむしろ陽子・中性子数比に応じて変化することが知られるようになった.従来の魔法数が失われたり,新たな魔法数が登場したりする現象が次々と発見されるようになると,中性子過剰な78Niの二重閉殻性が強く保存されているかどうかを知ることは原子核物理において一つの重要な課題となった.</p><p>原子核は核力で束縛された少数量子多体系であるため,理論的に正確な予測をすることが難しく,多くの場合なんらかの仮定に基づき単純化した模型によって性質を予測する.核子数が多く重たい原子核の場合は“凍った”二重魔法数核の外側の軌道に価核子が束縛されているという描像で記述される.中性子過剰な78Niの二重閉殻性を実験的に確定することは,さらに中性子比率が高い原子核の性質を予測し理解する上でも極めて重要である.さらには中性子星の合体や,超新星爆発において起こると考えられている重元素合成過程(r-プロセス)において78Niは開始点に位置するため,中性子過剰な原子核の性質がこれらの天体イベントを理解する上で鍵となる.</p><p>われわれは理化学研究所にある,世界最高強度の原子核(重イオン)ビームにより大量の不安定原子核を生成する能力を有する加速器施設,RIビームファクトリー(RIBF)においてインビームガンマ線(γ線)核分光の手法を用いて78Niの励起状態を世界で初めて観測した.実験では高強度の238Uビームから飛行核分裂反応により光速の60–70%の速度で生成される79Cuと80Znといった78Niよりも陽子を余分にもつ不安定原子核を,新たに開発した厚い液体水素標的システムに照射し,それぞれ一陽子,二陽子を抜き出す反応を起こすことで,78Niの励起状態を生成し,脱励起ガンマ線のエネルギーを測定した.79Cu由来の反応により観測された高いガンマ線のエネルギーは中性子過剰領域においても78Niの二重魔法性が健在である強い証拠となった.</p><p>一方で,80Znから二陽子を脱離する反応において,前出のものと同程度ながら異なるエネルギーのガンマ線遷移が強く観測された.このような励起状態の存在は予想外であり,「京」をはじめとした大型計算機による最先端の大規模理論計算が複数動員された.このうち2つの計算で実験結果と合致した.これらの解釈を統合すると,78Ni原子核が二重魔法数核に典型的に現れる「球形」の状態に加えて「ラグビーボール形状」の励起状態をとる,変形共存の性質(“柔らかさ”)をもち,しかも78Niよりもさらに中性子過剰な原子核において急速に魔法数が破れ,78Niが閉殻構造が失われる転換点となる可能性が示唆された.</p>
収録刊行物
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- 日本物理学会誌
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日本物理学会誌 75 (11), 690-695, 2020-11-05
一般社団法人 日本物理学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390286981358363264
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- NII論文ID
- 130007953051
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- NII書誌ID
- AN00196952
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- ISSN
- 24238872
- 00290181
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- NDL書誌ID
- 030733602
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- NDL
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可