P-1-C03 スピーチバルブを発声以外の目的で使用しても良いのですか?

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説明

単純気管切開患者におけるスピーチバルブの使用では、発声以外にも、呼気終末陽圧(PEEP)が保てることによる抹消気道や肺胞の虚脱防止、嚥下時に高い声門下圧が得られることによる誤嚥の防止(特に低張液の嚥下において)、および喉頭が呼気により乾燥することで異物に対する反応閾値が下がり、咳嗽反射が回復・改善することなどのメリットも望める。しかし、睡眠中や意識レベルが低下した患者への使用は禁止され、装着したままでの入浴や吸入も禁止されており、当然のことながら装着中の気管内腔には乾燥した空気が吸い込まれるというデメリットもある。そして何より使用時には医師または医療従事者による監視が必要とされている。 2007年にスピーチバルブの誤接続による死亡事故が発生し、厚生労働省から注意喚起を促すための文書が出され、誤接続を防止するタイプのスピーチバルブの使用が推奨されている。また、以前にはなかった小児用サイズのスピーチカニューレも製品化されている(側孔の位置を気管内腔に一致する位置に変更注文が可能)。ところが、小児はもともと気管の内径が小さく、さらに重症心身障害児(者)(以下、重症児 (者))では、筋緊張の亢進などに伴って頭頸部の捻転や反り返りが認められることも多く、側孔が気管内壁に接触して気管内に肉芽が形成される可能性も高い。つまり重症児ではスピーチカニューレが使用しにくいケースが多く、気管内でカニューレの側方を呼気が通過する形での使用となる可能性が高いと考えられる。 スピーチバルブの効用は魅力的だが、それにばかり目を奪われて重大な事故を起こしてしまうことは避けなければならない。しかし、使用を躊躇しているうちに繰り返されてしまう誤嚥性の下気道や肺胞の炎症もまた回避したい。特に在宅の重症児(者)では両者の板挟みになることも多く、導入の段階からの慎重な観察と家族への十分な指導を行ったうえでの使用が必須となる。

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