O-2-G01 バレット食道腺癌を発症した重症心身障害者の1例

  • 水野 勇司
    独立行政法人 国立病院機構 福岡東医療センター 小児科
  • スビヤント ケイジ
    独立行政法人 国立病院機構 福岡東医療センター 小児科
  • 中山 秀樹
    独立行政法人 国立病院機構 福岡東医療センター 小児科

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はじめに 重症心身障害児者(以下、重症児者)の年長化に伴い悪性腫瘍の発現が危惧されるが、訴えが乏しいため発見が遅れる傾向にある。また、逆流性食道炎は重症児者にしばしば認められる合併症のひとつである。今回、施設入所中の重症児者で、内視鏡的胃瘻造設術(PEG)の際に偶然バレット食道腺癌を発見し、約3年の経過で死亡に至った症例を経験したので報告する。 症例 症例は44歳男性。基礎疾患はアテトーゼ型脳性麻痺で、3歳より当院重症児者病棟に入所中であった。20歳代ころより徐々に経口摂取が困難となり、誤嚥性肺炎を繰り返すようになった。30歳より経鼻栄養チューブによる経管栄養を開始したが、41歳頃注入中の筋緊張亢進が顕著となり、チューブ事故抜去が頻発するようになった。42歳のとき、PEGを施行した際に、食道胃接合部付近に径1 cm大と径3cm大の 隆起性病変を認めた。内視鏡下に生検し病理学的検査を行った結果、バレット食道腺癌と判明した。ご家族と協議の結果、積極的治療は行わない方針となった。診断後3年を経て、死亡1カ月前に微熱、全身浮腫、酸素飽和度低下が発現し、CT検査で多発性肺転移、リンパ節転移、胸膜播種を認めた。死亡前日、意識レベルと酸素飽和度の低下があり、死亡当日血性嘔吐の後にご家族にみとれられながら永眠された。 結果と考察 経口摂取から経管栄養になり、胃食道逆流症による逆流性食道炎を長期に合併していた。PEG実施時にバレット腺癌を偶然発見して以降、緩和ケアを主体とした3年間に及ぶ闘病生活を過ごした。バレット食道腺癌は、持続的な胃酸の逆流から惹起されることから、逆流性食道炎を合併しやすい重症児者における潜在的な頻度は高いことが予想される。重症児者では、一般的な年齢より若年齢で発症する可能性があり、若年者であっても注意を要する。報告が少ないことから認知度が低いが、重症児者の重要な合併症のひとつとして認識すべきである。

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