O-037 脳静脈洞血栓症により重度左片麻痺、感覚低下を呈した全盲の症例

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抄録

<p>【はじめに】感覚情報は運動学習において主要な役割を果たしている。臨床場面においては視覚情報から運動学習を促進させることが多くあり、効果も報告されている。今回、視覚情報が遮断されている全盲の症例に対して、聴覚フィードバックや前庭迷路系に着目し理学療法を施行した結果、基本動作の改善が認められたので報告する。</p><p>【倫理的配慮】本研究はヘルシンキ宣言に沿って対象者に対して発表の趣旨を十分に説明し、同意を得た上で実施した。</p><p>【症例紹介】1 歳の時に網膜芽細胞腫により両眼球を摘出し全盲となった、病前ADL 自立した40 歳代女性。今回、脳梗塞の疑いで当センター入院され、当日に右頭頂葉皮質下出血を発症し開頭血腫除去術を施行した。第5 病日に静脈洞血栓症を診断され抗凝固療法開始した。</p><p>【経過と理学療法】脳静脈洞血栓症に伴う脳圧管理に難渋を呈し、第22 病日より離床開始した。離床開始時の理学療法評価は、GCS13 点、BrunnstromStage(左)I-I-II、感覚重度鈍麻、基本動作全介助、SCP6 点、FIM34 点(運動項目13 点・認知項目21 点)であった。症例は日常会話の聴覚刺激に対して多様な興味を示していたので、理学療法においても症例の周囲の環境や姿勢を詳細に伝えた。また、非麻痺側手掌でも実際に触れて頂いた。抗重力位では身体正中軸が大きく麻痺側へ偏倚していた為、座位や立位練習では軽介助にて頭頸部や身体軸を正中位に戻る運動を反復し前庭感覚を刺激した。</p><p>【結果】第66 病日で基本動作は全介助から一部介助~監視、SCP は6 点から3.5 点、FIM は34 点から47 点(運動項目17 点、認知項目30 点)と改善が認められた。</p><p>【考察】視覚以外の聴覚や前庭迷路系を主とした感覚フィードバックを行なうことで運動学習の一助になれたと考える。</p><p>【おわりに】症例を通して盲人に対しての理学療法や関わり方を学べた。今回の報告に協力して頂いた症例や家族に感謝する。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390287363459420800
  • NII論文ID
    130007997639
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.35.0_37
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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