めまい疾患と前庭リハビリテーション

DOI
  • 中山 明峰
    名古屋市立大学耳鼻咽喉科 睡眠医療センター

抄録

<p> 前庭機能障害患者に対するリハビリテーション(以下リハビリ)は,1944年にCawthorne.Tが,1946年にCooksey.FSが初めて報告して以来,数多くの臨床研究が行われており,姿勢安定性や固視機能,めまい感の改善に効果あることが報告されている1)。一側あるいは両側の前庭機能障害は,頭部運動に対する前庭神経の反応性が低下することで,平衡障害や姿勢安定性の低下,動揺視を引き起こしめまい感が誘発される。さらにめまい症状は,不安の増加や活動の制限などの心理社会的問題を引き起こすことで症状が増悪し,めまいの悪循環に陥る2)。そこで前庭リハビリは,視線を固定した状態での頭部運動やめまい感を誘発する運動,困難なバランス課題などの繰り返しにより,前庭神経核や小脳などの中枢神経系における代償を促すことで,立位・歩行中の姿勢安定性や頭部運動中の固視機能を改善し,動作・活動に対する耐性を高めて,日常生活活動の制限を少なくすることを目的に行われる。</p><p> リハビリの介入方法には,エクササイズを集団で行う方法や,小冊子を渡して自宅にて行ってもらう方法など様々なものがある。先行研究では,個々の患者の問題点や身体機能に応じて,個別のリハビリプログラムを治療者の監視のもとで行う方法を推奨している報告が多い。このように世界各国では前庭機能障害に対する個別リハビリの有効性は数多く報告されているのにもかかわらず,我が国においてエビデンスベースに基づく研究,実施された報告は多くない。</p><p> 本邦の問題点として,海外では医師がめまいを診断,前庭リハビリを指示し,理学療法士が行うという制度が普及していない。医師が直接治療に携わることは,治療効果にバイアスがかかる。また,現実問題として多忙な診療業務のなか,さらに現時点で医療保険制度が確立されていない状態では,前庭リハビリが普及することは容易ではない。このことを解決するために,理学療法士の皆さまにめまいとはなにか,なぜめまいにリハビリが効くのか,実際どのように実行するのか,などを含め,当施設がこれまで試み,現在も進行している前庭リハビリ方法を紹介する。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 47S1 (0), A-28-A-28, 2020

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390287540630044800
  • NII論文ID
    130008010511
  • DOI
    10.14900/cjpt.47s1.a-28
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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