筋の評価とトレーニング

DOI
  • 市橋 則明
    京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻

抄録

<p>はじめに</p><p> 廃用や加齢による筋力低下は,歩行障害や日常生活動作の障害につながるため,筋力低下に対する運動療法は理学療法プログラムの中でも最も重要なものの1つである。本講演では,超音波を使った筋の評価と筋力トレーニングの実際に関して,我々の最新の研究結果を中心に紹介する。</p><p>1.超音波を使った筋の評価</p><p>1)骨格筋の量的評価</p><p> 近年,サルコペニアが注目されているが,加齢によりすべての筋が同程度に萎縮するのであろうか? 萎縮しやすい筋,萎縮しにくい筋は何か? 健常若年女性と健常高齢女性の下肢筋の筋厚を比較した我々の報告において,加齢による筋萎縮がもっとも顕著であった下肢筋は大腰筋であった。また,ヒラメ筋の筋厚は若年者と歩行が自立している高齢者との間には有意差がなかったのに対して,若年者と歩行困難な高齢者との間には有意差がみられ,ヒラメ筋は歩行が自立している高齢者では加齢による筋萎縮が少ないことが確認された。本講演では,高齢者や変形性関節症患者を対象に超音波で測定した筋厚評価に関して紹介する。</p><p>2)骨格筋の質的評価</p><p> 我々は筋内の非収縮組織(脂肪や結合組織)の増加といった骨格筋の質的変化を超音波画像の筋輝度を用いて定量的に評価している。筋輝度は0から255の256段階で表現されるグレースケールで評価され,値が大きいほど高輝度で筋内の脂肪や結合組織などの非収縮組織が増加していることを意味する。加齢に伴い筋内の非収縮組織の割合が増加するため,高齢者の超音波画像における筋輝度は高くなる。大腿四頭筋の超音波画像の筋輝度を高齢者と若年者とで比較すると,若年者と比較して高齢者の筋輝度は有意に高値を示す。本講演では,高齢者や変形性関節症患者を対象とした質的評価に関して述べる。さらに,筋輝度による筋の伸張性評価の可能性に関して紹介する。</p><p>2.筋力トレーニングの実際</p><p> 筋力増強のための重要な2つの原則は,過負荷の原則と特異性の原則である。この2つの原則は間違いのないものであるが,どのような場合にも適応するものであろうか?例えば過負荷をかけられない高齢者や術後患者の筋力トレーニングはどのようにしたら良いのか。負担のかからない低負荷で筋力増強効果を得るためのトレーニング方法を考えることは理学療法にとって非常に重要である。近年では,最大の30%の負荷量でも疲労困憊まで回数を繰り返したら筋肥大が起こったという報告もある。本講演では我々が行っている低負荷でのトレーニング効果に関する研究やパワートレーニング,スロートレーニングに関する研究を紹介する。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 47S1 (0), A-32-A-32, 2020

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390287540630045952
  • NII論文ID
    130008010520
  • DOI
    10.14900/cjpt.47s1.a-32
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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