Adaptive management of vegetation in the fishway for fish runs and habitat in Miyanaka Intake-Dam on the Shinano River.

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  • 宮中取水ダムにおける魚類の遡上と生息に配慮した魚道内植生の順応的管理
  • キュウチュウ シュスイ ダム ニ オケル ギョルイ ノ ソジョウ ト セイソク ニ ハイリョ シタ ギョドウ ナイショクセイ ノ ジュンノウテキ カンリ

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Abstract

<p>東日本旅客鉄道株式会社が所有する信濃川発電所宮中取水ダムの魚道は,ダムの設置と同じ 1939 年に設置され,2011 年度に実施した 2 度目の魚道構造改善により大型魚道,小型魚道,せせらぎ魚道の 3 種の魚道を新設.また,親水性向上や環境教育の場の提供を図り,地域との共生を目指すと共に,河川環境と水力発電との調和に向けて取り組んでいくことを目的に,せせらぎ魚道と合わせて魚道観察室を新設.せせらぎ魚道は,15 cm 程度の玉石とコンクリートの隔壁により流路とたまり場を構築する設計となっており,水深は 0.15 m,流速は 0.54 m/s と設定されている.宮中取水ダム魚道で実施しているモニタリングの結果,2015 年度以降のせせらぎ魚道では 12~16 種類,魚道全体の約 6~8 割の魚種が確認されており,底生魚や遊泳力の小さな魚類の重要な魚道となっている.せせらぎ魚道と魚道周辺に多くの植物が生育しており,植生の繁茂により流路やたまり場が閉塞する懸念やせせらぎ魚道を散策したり魚道観察室から観察したりする際の景観への配慮から,魚道における植生の維持管理が課題である.2013年,効率的な除草に向けた現況把握のため,せせらぎ魚道及び魚道周辺区域で植生状況の調査を実施.環境省や新潟県が選定している重要種は確認されなかった一方,エゾノギシギシ,アメリカセンダングサ等の生態系被害防止外来種に該当する植物を 15 種確認し,そのうち特定外来生物は,アレチウリ,オオカワヂシャ,オオキンケイギクの 3 種を確認した.この調査結果を踏まえ,2014 年度には魚道における植生の維持管理手法について「せせらぎ魚道の外来種防除に係る取り組み指針(案)」を策定した.同指針(案)を参考に,これまでせせらぎ魚道及び魚道周辺区域の植生をまとめて除草する考え方で維持管理を行 ってきたところであるが,この手法では植生が形成した良好な水環境を維持することができないことがわかってきた.せせらぎ魚道の新設から 8 年が経過し,現在では植生状況の遷移がみられる.特に,せせらぎ魚道の一部においては,沈水植物の異常繁茂による水質や景観の悪化が懸念される一方で,在来種のミゾソバを主体とした植生の繁茂により日陰の環境が形成され,水生生物にと って好ましい環境が確認されている.魚道は本来,魚類の移動のための場であって,定着し生息する場ではないが,延長約 250 m あるせせらぎ魚道の一部で形成されるこうした環境は,底生魚や遊泳力の小さな魚類が生息したり,再生産したりすることもあることから,「日陰や隠れ場を生み出せる」,「景観を向上させる」というメリットと「移動環境を阻害する」,「水質を悪化させる」というデメリットを見極め,せせらぎ魚道で形成される植生環境を現地で観察しながら,除草により除去することなく,維持していくことが望ましいと考えられる.せせらぎ魚道において目指す植生の姿としては,適度に植物が生育して日陰環境や隠れ場を形成し,さらに外来種が減少して在来種が中心に優占する環境である.一方で,日常の維持管理において,在来種と外来種を選別して外来種のみを防除していくことは現実的に困難であることから,植生の遷移にあわせて維持管理方法を検討して取り組み指針(案)を見直していくことが今後の課題である.そのために,宮中取水ダム魚道における順応的管理の一環として,今後も,植生状況の遷移に応じて維持管理手法を改善し,引き続き順応的管理に取り組んでいく.</p>

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