ピグミースローロリスのオス同士の社会関係:オス同士の同居に伴う行動と生理学的ストレスレベルの変化
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- 山梨 裕美
- 京都市動物園 京都大・野生研
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- 根本 慧
- 日本モンキーセンター
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- Alejandro Josue
- 京都大・霊長研
書誌事項
- タイトル別名
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- Social relationships among captive male pygmy slow lorises (<i>Nyctycebus pygmaeus</i>): Is forming male same-sex pairs a feasible management strategy?
説明
<p>夜行性のスローロリスの社会行動に関してはわかっていないことが多い。成熟オスと成熟メスのホームレンジが重なっていて,親和的な関係性を持っていることが示されている。ただし,同性の成熟個体同士は排他的なホームレンジを築いていることが多く,その社会関係はわかっていない。公益財団法人日本モンキーセンターでは2016年に空港などで摘発されたピグミースローロリスの飼育環境改善及び環境教育・研究拠点のために,スローロリス保全センターを職員及び研究者の手で設立した。その中で,16個体(オス10個体,メス6個体)を対象に,同性のペアを作り,社会関係の構築過程について調査を行った。すべての個体は成熟個体で5 歳以上だった。2016年から2018年にかけて8つの組み合わせで試したのちに,5つのオスペアが形成できた。オスペアは,初期にはケンカが観察されたが10日ほどで収束した。オスメスペア・メス同士はケンカもほとんど観察されず,初日から高いレベルでの親和行動が観察された。初期には性による違いが顕著だったが,最終的にはオスペアでもメスペアでも,グルーミングや遊び,夜間の寝場所の共有といった社会交渉が観察され,攻撃交渉はほとんど観察されなくなった。寝場所の共有については,偶然よりも高い確率で観察され,寒さとの関連も見いだせなかった。 さらに,糞中グルココルチコイド代謝産物濃度の変化を評価したところ,同居によりストレスが長期的に増加することはなかった。1ペアでは,同居前よりも有意にストレスレベルが減少した。以上の結果から,同性の成熟個体であっても,ピグミースローロリスが親和的な社会関係を築くことが示された。オス同士のペアは初期にはケンカも観察されることから,理想的な選択肢ではないかもしれないが,最終的に築く親和的な関係性を考えると,余剰個体の問題などを解消する社会管理手法のひとつとなりうると考えられた。</p>
収録刊行物
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- 霊長類研究 Supplement
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霊長類研究 Supplement 36 (0), 23-23, 2020
日本霊長類学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390287783176316032
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- NII論文ID
- 130008029062
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可