金華山の野生ニホンザルにおける第一位オスの群れへの出入りとそれによる群れのまとまりの変動

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Fission-fusion caused by following an alpha-male’s repeated trips in a wild troop of Japanese macaques on Kinkazan Island

抄録

<p>2019 年9月~11月、金華山島のニホンザルB1 群で第一位オス(TY)が群れと共に行動したり、群れから離れて行動したりを繰り返すという特異な行動が観察され、その動きに影響されるように群れのまとまりが大きく変動した。本発表では、その報告を行う。TYは調査期間中に少なくとも6回にわたって群れへの出入りを繰り返し、長いときには2週間以上群れから離れたのちに群れに戻った。この間、複数のメスが群れ本体とは離れてTYと行動している様子が5 例確認され、うち3例ではTYを含む集団と群れ本体の双方を同時観察した。また、行動圏外で一部の個体がTYと共に行動している様子も2例観察され、うち1例ではTYの行動圏外への移動に一部の個体が追随し、残りの個体との間で分派が生じる過程が観察された。TYと共に行動していた個体の多くは、TYと親密な関係を築いていたメスとその血縁個体だった。以上の事例では、メスが積極的にTYに追随する様子が確認されたことから、群れのまとまりの変動はTYが群れから離れる際に、彼と親密な一部のメスたちが彼に追随したことによって生じたと推測される。なお、交尾期が終了した1~3月にもTYは群れへの出入りを繰り返したが、その間に同様の群れのまとまりの変動は観察されなかった。交尾期のみに群れのまとまりが変動したのは、交尾期特有のオスからメスへの攻撃を避けるため、多くのメスが移動の際にメスたちが彼を頼って追随したからだと推測される。実際、TYが群れにいる日にはメスが他のオスから攻撃される頻度が低く、彼の存在がオスの攻撃の抑止力となっていた。加えて、TYが他のオスよりも長期間群れにいたことでメスとの間により強固な親和的関係が築かれていたことも、メスたちが彼に追随したことに影響しているかもしれない。一方で、TYは度々行動圏外へ移動したので、特に親密なメス以外の多くは彼に追随しなくなったと考えられる。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390287783176555392
  • NII論文ID
    130008029048
  • DOI
    10.14907/primate.36.0_24_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ