ヒトと大型類人猿における脳の正中矢状面形態比較

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Midsagittal brain shape analysis in humans and great apes

抄録

<p>ヒトの脳において特異的に進化した形質を特定するには、ヒトの脳と最も近縁である大型類人猿の脳を比較し、その形態的差異を明らかにすることが重要である。 本研究ではヒトと大型類人猿の深部領域まで含めた脳の形態差を明らかにすることを目的に、正中矢状面における脳形態を幾何学的形態測定学により分析した。 具体的には、ヒト15個体、チンパンジー14個体、ボノボ3個体、ゴリラ2個体、オランウータン3個体の頭部MRI画像から正中矢状断面画像を取得し、大脳輪郭、脳溝、脳梁、視床、小脳、脳幹などに解剖学的特徴点及び準特徴点を配置することで脳形態を定量化した。そして、位置合わせ及びサイズ正規化後の特徴点座標値の主成分分析を行うことで、ヒトと大型類人猿の脳形態の変異傾向を抽出した。その結果、ヒトの脳形態は、大型類人猿と比較して、脳幹・小脳が相対的に垂直に、後頭葉、前頭葉眼窩部が下方に位置し、頭頂葉が上方に顕著に突出する傾向がみられた。深部領域に着目すると、前頭前野内側、頭頂葉楔前部の拡大がみられた。また、帯状回、脳梁は頭頂葉の突出に伴い上方に突出するが、前交連、視床など中心部組織は相対的に種間差が小さいことが明らかとなった。このようなヒトの脳形態の変異傾向は、ヒトは直立二足歩行の獲得により脳幹・小脳が垂直に、後頭葉を相対的に下方に配置させることで、頭頂葉の上下方向への拡大を実現できたことを示唆していると考えられる。楔前部は視空間統合機能と関係することから、石器製作・利用に必要な認知能力とも関係する。二足歩行の獲得による脳幹・小脳部の垂直化が、ヒトに特異的な大脳化への前適応となった可能性が示唆された。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390287783176559232
  • NII論文ID
    130008029095
  • DOI
    10.14907/primate.36.0_17_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ