京都・嵐山のニホンザル群における老齢メスの死体へのグルーミング行動

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タイトル別名
  • Grooming behaviors on a corpse of an old female Japanese macaque in Arashiyama, Kyoto

抄録

<p>ヒト以外の霊長類における同種個体の死体への反応の報告が蓄積されてきている。しかし、その多くは死亡したアカンボウに関するものであり、それ以外の年齢の死体を扱った報告は乏しい。またアカンボウ以外の年齢の死体を扱った報告では、死体は致命的な外傷を負っていたり、死後長時間が経過して腐敗が進行したりしている場合が多い。本発表では、無傷かつ死後数時間のニホンザルの老齢メスの死体に対する他個体の反応が観察されたので、その詳細を報告する。 京都市西京区の嵐山モンキーパークいわたやまにて、 2020年7月20日に本事例を観察した。死亡個体は 29歳のメスであった。死体発見から232分間、死体への他個体の反応を記録した。さらに、唯一死体にグルーミングをした個体のその後の社会交渉を、2020年8月9日から8月21日にかけて個体追跡サンプリングにより記録した。また、事例観察前の2019年5月から2020年3月にかけて、死亡個体を含む群れ内の個体の社会交渉を、スキャンサンプリングで記録した。 <br>死体に外傷は見られず、死後5時間程度と推定された。 死体の観察中に4度、6歳メスが死体をグルーミングした。グルーマーは死亡個体と生前に社会交渉が観察されていなかった個体であった。死体へのグルーミング中には、死体の性器周辺をグルーマーが覗き込む行動が観察された。また事例観察日以降、死亡個体と生前に社会交渉が見られた個体とグルーマーが、新たに社会交渉を行う場面が観察された。観察中に死体に接触した個体はこの個体のみであり、その他に2個体(2歳メスと34歳メス)が死体に近接した。そのうち2歳メスが近接した際には、22歳メスがその個体を威嚇し追い払った。 <br>本事例より、死体への親和的な反応は必ずしも生前の親密な社会関係に起因するわけではないことが示唆された。死体へのグルーミングが起きた背景を中心に、考察を行う。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390287783176739072
  • NII論文ID
    130008029177
  • DOI
    10.14907/primate.36.0_34_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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