ヨーロッパ中部のルザティア産スギ科木材化石の研究

書誌事項

タイトル別名
  • Taxodiaceous woods in Lusatia (Central Europe), including curiosities in their nomenclature and taxonomy, with a focus on Taxodioxylon
  • とくにTaxodioxylon に注目し,特異な命名や分類にも触れる

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抄録

スギ科の木材化石はヨーロッパ中部のルザティアやヨーロッパの新生代でもっとも研究が進んでいるグループである。これらの針葉樹の属は古くから知られていたが,現生属との関係といった面で,属名には混乱がある。ルザティア産スギ科木材には,セコイア属,スギ属,ヌマスギ属と近縁なTaxodioxylon の種や,スイショウ属やコウヨウザン属と近縁なGlyptostroboxylon の種があり,奇妙なことに,タイワンスギ属に近縁なCupressinoxylon の種がある。さらに,絶滅属のQuasisequoioxylon や絶滅種Juniperoxylon pachyderma ex parte もある。Juniperoxylonの一種はCupressospermum saxonicumと共伴した。形態属Quasisequoioxylon は,スギ科や狭義のヒノキ科と共通の木材構造をもっており,絶滅属Quasisequoia の木材であると考えられる。Glyptostroboxylon tenerum (Kraus)Conwentz の基礎異名であるGlyptostrobus tener Kraus の基準プレパラート標本が再発見され,それを詳細に再検討した結果,Glyptostroboxylon の記載を改訂することができた。ヌマスギ属やスギ属,セコイア属,メタセコイア属,セコイアデンドロン属など現生の多くの属と近縁な種を含むためもっとも普遍的な形態属はTaxodioxylon である。この形態属は1948 年にHartig によってTaxodioxylon goepperii を基準種として設立された。Gothan は1905 年にこの分類群を改訂している。例えば,Greguss とBolkhina はMetasequoioxylonとともにSequoioxylon を使っているが,これらの属は広い意味でのTaxodioxylon に含まれるため,Taxodioxylon の改訂が必要であることを呈示した。Cupressinoxylonの一種はタイワンスギ属にもっとも類似する。木材化石だけでなく,クチクラをはじめとする他の器官の情報を合わせて考えることによって,中新世のルザティアで泥炭を形成した森林を復元することが可能となる。木材化石記録は,スイショウ属などを伴った比較的富栄養な段階から,セコイア属やコウヨウザン属,タイワンスギ属を伴う中栄養な段階をへて,スギ属などを伴った貧栄養の立地へと変化したことを示している。

収録刊行物

  • 植生史研究

    植生史研究 19 (1-2), 25-46, 2011

    日本植生史学会

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