木質バイオマスから化学品までの一貫製造プロセスの開発

  • 田上 歩
    日本製紙株式会社 研究開発本部 基盤技術研究所

書誌事項

タイトル別名
  • Development of the Consistent Chemical Production Process from Woody Biomass
  • モクシツ バイオマス カラ カガクヒン マデ ノ イッカン セイゾウ プロセス ノ カイハツ

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説明

<p>新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクト,「木質バイオマスから各種化学品原料の一貫製造プロセスの開発」において,木材から石油と同等以上の機能を持つ化学品原料を,競争力のあるコストで製造する,一貫製造プロセスの構築を目指して取り組んできた。</p><p>本プロジェクトにおいて,成分分離技術として蒸解を選択したが,従来の製紙用途と化学品利用とで最も重要な相違点は,リグニンの利用にある。現状の製紙用パルプの価格は,石油や他のバイオマス原料に対し,競争力を持たない。従って,リグニンを付加価値の高い製品とすることで,パルプの価格を抑えることが必要となる。リグニンの高付加価値用途の1つとして,樹脂への利用を想定し,リグニン純度への配慮から,薬液に硫黄を含まないソーダAQ蒸解を選択し,リグノブースト法によりリグニンを単離し,各種品質変動を調査した。</p><p>その結果,各3回のリグノブーストの運転で得られた,スギ,および,ユーカリソーダリグニンの品質に,大きな変動は確認されなかった。また,ユーザー企業の評価においても,処方の調整により目標とするスペックを満たすフェノール樹脂,もしくは,硬質ポリウレタンフォームを得られることを確認した。</p><p>リグニンは構造が非常に複雑なポリマーで,工業用途での使用が難しく,膜処理や溶媒抽出等,利用に向け様々な検討が行われている。しかし,本プロジェクトの成果として,ソーダAQ蒸解で得られた黒液から精製したリグニンが,複雑な後処理なく,付加価値の高い樹脂への利用が可能なことを見出すことができた。今後も付加価値の高い分野への供給を視野に入れ,引続き調査,および,技術開発を進める。</p>

収録刊行物

  • 紙パ技協誌

    紙パ技協誌 75 (5), 420-423, 2021

    紙パルプ技術協会

参考文献 (4)*注記

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