化学物質の肝発がん性評価におけるチャレンジ!-ヒト肝細胞キメラマウスの活用-
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- 山田 智也
- 住友化学株式会社 生物環境科学研究所
書誌事項
- タイトル別名
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- Challenge in evaluating human liver carcinogenicity of chemicals: Application of chimeric mice with human hepatocytes
抄録
<p>抗てんかん薬phenobarbital (PB)は、核内受容体であるConstitutive Androstane Receptor (CAR)を活性化して発がん過程で必須要件である肝細胞増殖を増加させ、長期曝露でげっ歯類に肝細胞腫瘍を誘発する。一方、複数の疫学研究ではPB曝露と肝発がんとの関連性は示されていない。我々は培養肝細胞を用いて検討した結果、PBによる増殖増加はラット肝細胞のみで認められヒト肝細胞ではみられなかったことから、PBにはヒトでの肝発がん性はないとの見解を2009年に報告した。一方、CARやPregnane X Receptor (PXR)を遺伝子改変にてヒト化したhCAR マウスやhCAR/hPXRマウスを用いた実験で、PB投与で肝細胞は増殖することや腫瘍化することが他の研究グループから2014年に報告された。hCAR/hPXRマウスでは受容体はヒト型であるものの下流の情報伝達系はマウスであることに着目し、我々はヒト肝細胞を移植し受容体およびその下流までヒト化したヒト肝細胞キメラマウス(PXB-マウス)を用いて増殖性を検証した結果、当該キメラマウスのヒト肝細胞はPBによっても増加しなかった。尚、ラット肝細胞を移植したキメラマウスではPBで細胞増殖が増加したことから、移植モデルの肝細胞増殖機能は充分に保持されていた。また、PBで変動する遺伝子群を比較したところ、hCAR/hPXRマウスはむしろCD-1マウスと類似していた。以上の結果から、ヒト肝細胞キメラマウスは移植肝細胞の本来の性質を保持する有用なヒト化モデルと考えられた。また、このモデルから得られたヒト肝細胞増殖性に関するPBならびに他のCAR-activatorsの陰性結果から、CAR-activatorにはヒトにおける肝発がん性はないと考えられた。本発表では、これらの実験結果を概説する。</p>
収録刊行物
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- 日本毒性学会学術年会
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日本毒性学会学術年会 48.1 (0), S2-4-, 2021
日本毒性学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390289011244391552
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- NII論文ID
- 130008073915
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可