微小地震による奥会津地熱地域での涵養注水モニタリング

  • 田中 勇希
    国立研究開発法人産業技術総合研究所 再生可能エネルギー研究センター
  • 岡本 京祐
    国立研究開発法人産業技術総合研究所 再生可能エネルギー研究センター
  • 浅沼 宏
    国立研究開発法人産業技術総合研究所 再生可能エネルギー研究センター
  • 岡部 高志
    地熱技術開発株式会社
  • 阿部 泰行
    奥会津地熱株式会社
  • 一戸 孝之
    独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構

書誌事項

タイトル別名
  • Microseismic monitoring for recharge injections in Okuaizu Geothermal Field
  • ビショウ ジシン ニ ヨル オウアイズ チネツ チイキ デ ノ カンヨウチュウスイ モニタリング

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説明

<p> 国内の地熱発電所において,蒸気の採取法の最適化・安定化を実現する技術の開発が検討されている。この手段の一つとして,EGS(Enhanced/Engineered Geothermal System)技術の一種である涵養注水が考えられる。これは地熱発電で用いる生産井と還元井に加えて,河川水等を人為的に地熱貯留層へ注水する涵養井を利用して蒸気量の回復を試みる技術である。奥会津地熱地域(福島県柳津町)では,2015年から,独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の「地熱貯留層評価・管理技術」プロジェクトの一環として,蒸気生産量安定化手法の検討のため,涵養注水試験が行われている。国立研究開発法人産業技術総合研究所では観測地域で発生する微小地震の観測・解析を行っており,この結果から地下状況や,貯留層に対する涵養注水の効果の的確かつ速やかな把握を行った。本研究では,地表面および坑井内に設置した地震計で取得される波形データをもとに微小地震の発生数や震源分布の速報解析を実施し,その結果から注水の挙動監視を行った。</p><p> 2018年に1回,2019年から2020年にかけて2回の涵養注水試験が行われ,それぞれで微小地震モニタリングを行った。2018年の注水試験では注水前と比較して注水期間中の微小地震の発生数の増加は見られず,坑井近傍の微小地震も注水前に比べほとんど増加しなかった。2019年1回目の注水試験では注水前と比較して注水期間中に微小地震の増加が見られ,2018年注水試験時より深部での微小地震の発生も見られた。2019年2回目の注水試験では微小地震の発生数は注水前と比較して増加しなかったが,2019年1回目と同様に深部での微小地震の発生が見られた。これら微小地震モニタリングの結果から,2018年の注水試験では注水と微小地震の関連性は判然とせず,2019年の2回の注水試験では注水がより地下深くに行き渡っていることが示唆された。</p>

収録刊行物

  • 物理探査

    物理探査 74 (0), 36-46, 2021

    社団法人 物理探査学会

参考文献 (3)*注記

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