過去勤務債務の償却年数設定における裁量的行動

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タイトル別名
  • Discretionary Behavior about Cost Allocation of Prior Service Cost
  • カコ キンム サイム ノ ショウキャク ネンスウ セッテイ ニ オケル サイリョウテキ コウドウ

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抄録

本稿の目的は,減額に起因する過去勤務債務の償却年数設定に許容された裁量の余地に対して,経営者がどれほど裁量的な選択を行っているのか,そうした選択に影響を与える要因は何であるのかを明らかにすることである。本稿では,過去勤務債務の償却年数が数理計算上の差異の償却年数よりも短く設定される状況に注目した検証を行う。その結果,以下の4 点を発見している。①減額に起因する過去勤務債務の償却年数は増額に起因する場合と比較して保守的でない傾向にある。②過去勤務債務の償却年数設定においては数理計算上の差異の償却年数と比較して裁量を行使している可能性が高い。③この傾向は短期的にターゲット利益を達成する目的を反映している可能性が高い。④しかし,外国人投資家や機関投資家によるモニタリングによって阻止することができる可能性が示唆される。これらの結果からは,減額に起因する過去勤務債務の償却年数設定には,ターゲット利益の達成というベネフィットと,株主に対する説明コストの上昇というコストのトレードオフ関係が存在する可能性が示唆される。

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