ニダーナ,イティヴリッティカとアヴァダーナ

  • 徐 美徳
    Postdoctoral researcher, Renmin University of China

書誌事項

タイトル別名
  • Nidāna, Itivṛttaka and Avadāna
  • Nidana, Itivrttaka and Avadana

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抄録

<p>本稿は,十二支分中の四支分,並びにそれらの緊密な相互関係を,インド原典と漢訳に基づきつつ論じる.導入部で十二支分と三蔵の関係について論ずる.大乗阿毘達磨集論,声聞地経などの諸節によると,四支分は三蔵の律に属するものである.本稿の最初に,三種のニダーナ,すなわち経のニダーナ,偈のニダーナ,律のニダーナの各々に焦点をあてる.ニダーナとアヴァダーナの関係について,この両支分は古い区分すなわち九支分には含まれていない.律のニダーナは体系的に,別解脱経の経分別に保持されている.教団規則の背景を構成する現在事はニダーナと呼ばれ,現在事の背景を構成する過去事はアヴァダーナと呼ばれていた.本稿第二部では,イティヴリッティカの語源を論じる.これに関しては二つの理論がある:Ityuktaka, chn. rushiyu如是語,そしてItivṛttaka, chn. benshi本事である.第三部は,アヴァダーナ,ジャータカそしてイティヴリッティカの関係に関するものである.ここでの分析は,瑜伽師地論,大乗阿毘達磨集論そして成実論に基づいている.言及すべきは,岩本裕によるイティヴリッティカの系図で,そこではニダーナとアヴァダーナはイティヴリッティカから派生している.本稿最終部はアヴァダーナと律の関係を,十地経論,大智度論及びマハーヴァストゥ中の記述の検証を通じて分析しつつ,論じる.平川彰の仮説,すなわち大衆部律の原型は経分別と犍度部にアヴァダーナとジャータカを含んでいたという説を証明することが重要であるが,それらの資料は後代に改訂されたものであり,別にマハーヴァスツーアヴァダーナ(アヴァダーナとジャータカ),そして大衆部律(律の核心的資料)という形で伝承された.</p>

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