静岡県で採集されたフネドブガイ属の一種(二枚貝綱:イシガイ科)

  • 内野 透
    Institute of Environmental Ecology, IDEA Consultants, Inc.
  • 白子 智康
    Institute of Environmental Ecology, IDEA Consultants, Inc.
  • 吉里 尚子
    Institute of Environmental Ecology, IDEA Consultants, Inc.
  • 吉成 暁
    Institute of Environmental Ecology, IDEA Consultants, Inc.
  • 鳥居 高明
    Institute of Environmental Ecology, IDEA Consultants, Inc. Laboratory of Molecular Reproductive Biology, Graduate Division of Nutritional and Environmental Sciences, University of Shizuoka
  • 中村 匡聡
    Institute of Environmental Ecology, IDEA Consultants, Inc.

書誌事項

タイトル別名
  • A Species of <i>Anemina</i> (Bivalvia: Unionidae) from Shizuoka Prefecture, Central Japan
  • A Species of Anemina (Bivalvia: Unionidae) from Shizuoka Prefecture, Central Japan

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抄録

<p>2015年から2017年にかけて静岡県焼津市の水路から採集されたフネドブガイ属の一種 Anemina sp. について,種を特定することを目的に分子系統解析および殻形態の検討を行った。ミトコンドリアCO1遺伝子を用いた分子系統解析の結果,静岡県産フネドブガイ属はDNAデータベース(DDBJ/EMBL/GenBank)に登録されているフネドブガイ Anemina arcaeformisAnemina globosulaAnemina euscaphys の配列とともに単一のクレードを形成し,クレード内の平均遺伝距離が0.39%と小さいことから,これらはすべてフネドブガイとして見なされ得ることが示唆された。一方,形態観察では,静岡県産フネドブガイ属の殻形態は,殻後端の位置が低い点と稜線が発達する点,殻幅が小さい点で Anemina euscaphys のそれと一致した。DNA塩基配列を取得した個体の形態に関する情報は先行研究では示されておらず,これらの配列が誤同定された個体から取得された可能性も考えられること,ならびに,これらを分類学的に整理した先行研究はなされていないこと,また,検討すべき有効種である Anemina fluminea が先行研究では扱われていないことから,本研究では種を確定させず,フネドブガイ属の一種とするに留めた。</p><p>フネドブガイとして見なされ得る系統群は,これまで中国,韓国,日本の九州北部に分布することが知られており,本州からは初の記録である。今回本種が見つかった水路はウナギ養殖場から流れ出ているものであることから,本種はウナギ稚魚(シラスウナギ)の輸入に伴い,他の生息地から移入された可能性がある。一方で本種はヌマガイ Sinanodonta lauta やタガイ Beringiana japonica,ミナミタガイ Beringiana fukuharai などとよく似ているため,在来種でありながらこれらの種と混同されてきたためにこれまで報告がなかったという可能性も十分に考えられる。</p>

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