現在のニホンザル嵐山E群における「石遊び」行動

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タイトル別名
  • Recent changes in stone handling behavior of Japanese macaques (<i>Macaca fuscata</i>) in Arashiyama E Troop

抄録

<p>嵐山ニホンザル集団の「石遊び」行動は、40年間断続的に研究が続けられているものの直近10年では行われていない。本研究では、全ての個体を識別した上で、「石遊び」行動をする個体名と「石遊び」行動のパターンを記録し、先行研究との比較によって「石遊び」行動の変化を検討することを目的とした。京都府京都市嵐山のニホンザル嵐山E群131頭を対象に2020年11月1日から2021年1月23日にかけて個体追跡サンプリングと行動サンプリングを行った。3つの結果が得られた。第一に、先行研究では全体の90%以上の個体に「石遊び」行動を確認しているが、本調査では全体の半分程度だった。とくに6〜13歳の個体にはほとんど「石遊び」行動が見られなかった。この年代は個体数が少ないため同年代間の伝播が抑制された結果である可能性がある。第二に、1979年から2008年には「石遊び」行動のパターン数が増加していたにも関わらず、本調査ではその数がやや減少していた。また、新しい行動パターンを5種観察した。全て0~1歳の個体によるものであり1~2度しか観察できなかったため単発的な行動と思われる。第三に、家系を順位ごとに三つのグループに分け、「石遊び」行動を行う個体数の割合を調べたところ、順位が低いほど「石遊び」行動の見られる個体の割合が多い事がわかった。オトナメス(5歳~)には、コドモ(0~4歳)と比較して、順位の低さと「石遊び」行動を行う個体数に、より強い相関が見られた。このことから高順位のコドモには同年代間の伝播が働いていることが推測される。本研究には、「石遊び」行動の少ない冬季に行ったこと、全個体を追跡できなかったこと、調査時間が先行研究の半分以下に留まることに問題がある。「石遊び」行動が見られなかった個体が本当に行なっていないのか、今回見られなかったパターンが本当に無くなっているのかについて、より詳細な追加調査が必要である。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390289464514372096
  • NII論文ID
    130008091094
  • DOI
    10.14907/primate.37.0_27_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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