屋久島におけるサイズの異なる隣接群間でのニホンザルオスの社会関係の比較

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  • A comparison of social relationships among male Japanese monkeys in adjacent groups on Yakushima Island

抄録

<p>霊長類の社会には種内変異があると考えられている。 ニホンザル(Macaca fuscata)の種内変異の研究については、餌付け群同士の比較にはじまり、餌付け群と野生群の比較から、環境の異なる野生群同士の比較へと進んできた。そうした中で群れサイズが小さく社会性比(SSR:オトナメス1個体あたりのオトナオスの数)が高い屋久島のヤクシマザル(M. fuscata yakui)の群れでは、オス間のグルーミング頻度がホンドニホンザル(M. fuscata fuscata)野生群の金華山の群れよりも高いことがわかった。しかし、地域間の比較では遺伝的要因や生態学的要因は排除しきれていない。一方、屋久島西部の中にも群れサイズが大きく社会性比が低い、金華山的な特徴を持った群れが存在する。本研究では、2020年11月から2021年3月の間、屋久島西部において、群れサイズと社会性比が大きく異なるソラ群とリク群のオトナオスを終日追跡し、オス間の交渉及びオス-メス間の交渉を記録した。遊動域が隣接する2群を直接比較することで、遺伝的要因と生態学的要因の影響を最小限にしたうえで、群れサイズとSSRがオス間の交渉に及ぼす影響、及びその決定要因を明らかにすることを目的とする。分析の結果、群れサイズが大きくSSRが低いソラ群ではオス間の親和的交渉頻度は低く、攻撃的交渉頻度は高くなった。また、高順位オスから低順位オスへのサプランティング頻度は高くなった。 これらの結果は、屋久島内であっても、群れサイズが小さくSSRが高い群れでは、オス同士が結束して周囲の群れオスから発情メスを守る必要があるため、協力関係を維持するために親和的交渉頻度が高く、さらに低順位オスからの支援を引き出すために群内での高順位から低順位に向けた攻撃的交渉頻度が低くなる傾向があることを示唆している。また、オスの社会関係は遺伝的要因や生態学的要因によらず変化する可能性が示唆された。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390289464516012288
  • NII論文ID
    130008091090
  • DOI
    10.14907/primate.37.0_40_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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