透析患者におけるバレニクリン使用症例

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抄録

【はじめに】<br> 平成22年9月より、院内の様々な診療科からの要望や福岡南地区の地域支援病院ということもあり、福岡徳洲会病院では禁煙外来を設置し、保険診療による禁煙治療を開始した。そのため当院で禁煙治療を受ける患者は循環器疾患や精神疾患など何らかの疾患を有する患者が多い。<br>  当院禁煙外来では医師、看護師のほかに薬剤師が初回来院時、患者に対して面談を行っている。その際併用薬や既往歴などから使用薬剤の選択を行い、医師に処方提案を行っている。また、処方が出た後に、詳しい使用方法や副作用、飲み合わせなどの服薬指導を行っている。<br>  当院の禁煙治療に使用されている医薬品はバレニクリンが多いが、添付文書上では腎機能低下患者や精神疾患患者には慎重投与となっており、透析患者に対し明確な投与量の設定はされていない。また、国内での透析患者への投与量を検討した報告がなかった。<br>  そこで我々は、透析患者の初回投与量を0.25mg1日1回4日間、維持量を0.5mg1日1回の設定で治療を開始し、薬剤師は患者の消化器症状等の副作用の発現をモニタリングしながら投与量や投与間隔の調節を医師に提案することとした。<br>  今回、平成23年8月末まで行われた血液透析患者への禁煙治療4例の中の1例について報告する。<br> 【方 法】<br>  バレニクリンの血液透析患者初期投与量は、重度腎機能障害患者(クレアチニンクリアランス(Ccr)30mL/min未満)の場合の初期投与総量12mgの半分程度を目標とし、1日1回0.25mg 4日間、1日1回0.5mg 10日間(7m g)と設定した。また認容性があればさらに重度腎機能障害患者の上限投与量0.5mg1日2回まで増量、認容性なければ、維持もしくは減量することとした。<br>  インタビューフォームより透析患者の半減期は重度腎機能障害患者の約1.4倍なので初期投与量は重度腎機能障害患者の75%程度でもよいと思われるが、処方の簡便性と安全性を考慮して半分量とした。<br> 【結 果】<br>  本症例では、嘔吐まではなかったものの消化器症状の悪化を認め、食欲が落ちる時期と重なったこと、また透析に伴う不安解消のため喫煙期間が延長し、禁煙外来期間中の禁煙は成功できなかった。しかし、後日、透析の看護記録で「もうタバコを吸っていない」とあり、最終的には禁煙できたようである。<br> 【考 察】<br>  本症例で禁煙外来期間中に禁煙達成できなかった理由として、まず女性であったということ、もともと消化器症状の訴えが多く、さらに食欲が落ちる時期と重なったこと、また透析に伴う不安の解消方法が喫煙であったことが考えられる。なおかつ、バレニクリンの副作用、禁煙に伴う症状と血液透析に関連する症状が共通することが多いことが今回の症例でわかった。(表4、5)<br> 【結 語】<br>  現在、薬剤師の関与が原則初回のみであるため、詳細な服用量と服用日数の把握ができず、正確な解析ができ なかった。現時点では至適投与量や投与間隔の設定まではできていないが、今後は禁煙手帳などを利用して詳細な状況把握を行い、より副作用がでない投与量の設定などを行いたいと考える。<br>  また、透析患者に対する禁煙の薬物療法の難しさを知ることがでた。投与量や表面的な副作用のことだけでなく透析関連症状も含めた総合的かつ継続的な薬学的ケアの実践が必要である。

収録刊行物

  • 禁煙科学

    禁煙科学 vol.5 (09), 14-16, 2011

    日本禁煙科学会

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