日本におけるシリアル食品市場の生成・発展に関する史的分析

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タイトル別名
  • Historical Analysis about the Creation and Development of Cereal Foods Markets in Japan
  • ニホン ニ オケル シリアル ショクヒン シジョウ ノ セイセイ ・ ハッテン ニ カンスル シテキ ブンセキ

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説明

<p>本稿の目的は、外資系企業の参入を起点とした食品市場(具体的には、シリアル食品市場)の生成と発展の歴史を解き明かすことである。</p> <p>これまでの先行研究では、外資系企業の参入後すぐに市場が発展した事例が取り扱われている。もとより、外資系企業のもたらしたすべての新製品・市場がすぐに発展を遂げたわけではない。外資系企業の参入とその後の成果は多様である。そこで本稿は、外資系食品企業の参入を起点として導入された製品を対象に、市場の生成後その発展に時間がかかった事例についての歴史を明らかにすることを課題とする。市場の発展に時間がかかった事例を取りあげ、その歴史を丹念に追うことによって、外資系企業の参入を契機として生成した市場の発展に関する歴史像を描き出すことができると考える。</p> <p>本稿では、シリアル食品市場の生成と発展の歴史を「製品カテゴリーの創造」という視点から考察する。その結果、シリアル食品に対する製品カテゴリーの定義づけが変わり、同製品は何度も新たな製品カテゴリーとして創造されてきたという経緯が明らかになった。具体的には、以下のような変遷をたどった。シリアル食品は、日本市場に本格的に登場した1960 年代は「日本の従来の朝食とは異なる新しい朝食」という製品カテゴリーの創造が目指されたものの、なかなかうまくいかず、紆余曲折があり「おやつ」の一製品カテゴリーとして再定義された。その後、「朝食の主食」という製品カテゴリーに転じることを目指し、長い年月をかけその認知度を高めたが、「おやつ」としての扱いが主であり、市場に大きな変化は生じなかった。多くの企業努力もあり、2010 年代に入り、シリアル食品は「健康価値の高い朝食の食材」という製品カテゴリーに再定義された。この結果、日本の食文化や時代のニーズとも適合し、ようやく市場は大きな発展を遂げることに成功した。</p> <p>本稿で明らかにされた事項は、次の二点である。第一、外資系企業と日本企業が相互作用しながら、新たに導入したシリアル食品に関する製品カテゴリーをつくりあげ、そしてその製品カテゴリーの再定義を幾度も試みていった。第二、試行錯誤の末、現地の食文化に適合し、かつ魅力的な製品カテゴリーとして再定義されたことによって、ようやくシリアル食品市場の発展がみられた。</p>

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