熱帯の成層圏大気サンプルから得られた平均大気年齢の解釈へのナッジング大気大循環モデルの応用

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  • Application of a Nudged General Circulation Model to the Interpretation of the Mean Age of Air Derived from Stratospheric Samples in the Tropics

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<p> インドネシアのビアクで行われたCoordinated Upper-Troposphere-to-Stratosphere Balloon Experiment in Biak (CUBE/Biak)観測キャンペーンの一環として行われたクライオジェニックサンプリング実験による大気サンプルから推定された平均大気年齢(mean age)の成層圏高度分布について、大気大循環モデルに基づく化学輸送モデル(Atmospheric general circulation model-based Chemistry Transport Model: ACTM)を用いたBoundary Impulse Evolving Response (BIER)法とラグランジュ後方流跡線解析の二つの方法を適用して検証した。ACTMは、大気大循環モデルをEuropean Centre for Medium-Range Weather Forecasts Reanalysis-Interim (ERA-Interim)にナッジングすることにより、1時間間隔の現実的な気象場を提供した。BIER法では陽に解像されない拡散混合過程を考慮することが可能であり、後方流跡線解析では空気塊が観測地点に到達するまでの経路を区別できる。ACTMによって再現された共通の輸送場に対して二つの方法を適用することは、CO2とSF6から推定された平均年齢を評価する上で有用である。計算に用いた輸送場の信頼性は、ラグランジュ法によって再現されたCO2、SF6、および水蒸気の鉛直分布を観測結果と比較することで評価した。二つの方法による平均年齢をCO2 ageと比較すると、ラグランジュ法の結果が比較的良い再現性を示した。ラグランジュ法の平均年齢はやや小さくなるバイアスが見られたが、このことは流跡線計算を一定の有限時間で停止させているためであると考えられる。一方、BIER法の平均年齢は、高度25km以上においてCO2 ageよりも大きくなっており、モデルの拡散の効果が大きい可能性が示唆された。これとは対照的に、SF6 ageとの比較では成層圏下部のみで再現性が良いものの、SF6 ageはラグランジュ法の平均年齢よりもかなり大きくなった。ラグランジュ法では中間圏起源の空気塊が含まれていないことや、観測された上層のSF6濃度が流跡線から再現された濃度よりもかなり低くなっていることから、観測された大気サンプルがSF6消失の影響を受けた中間圏大気との混合の影響を受けているために平均年齢が過大評価になっているという仮説を裏付けている。</p>

収録刊行物

  • 気象集誌. 第2輯

    気象集誌. 第2輯 99 (5), 1149-1167, 2021

    公益社団法人 日本気象学会

参考文献 (64)*注記

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