永久歯複数先天欠損症例における根未完成歯の自家移植症例
書誌事項
- タイトル別名
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- A Case of Autotransplantation of an Incomplete Root Formation Tooth in a Patient with Congenitally Missing Teeth
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抄録
<p> 緒言:永久歯の先天欠損は臨床上散見され,その改善・回復のためにさまざまなアプローチが考案されている.若年者の先天欠損へのアプローチの一つとして,欠損部への歯の自家移植がある.若年者の歯を自家移植すると,歯根が未完成で根尖孔が大きく開いているため歯髄が生着しやすく,歯内療法が必要ない場合がある.また,Hertwigの上皮鞘が損傷することなく移植歯の根尖に付着していれば,歯根の成長が期待できる.本症例では,萌出スペースを欠く対顎の根未完成歯を先天欠損部に移植し,移植後に歯髄が生着し,歯根が正常な長さまで成長したので報告する.</p><p> 症例:患者は初診時2歳7カ月の女児で,反対咬合による審美障害を主訴に来院した.5歳の時点でパノラマエックス線検査したところ,15,24,25,45の4歯の永久歯の先天欠損を認めた.左側の歯数が上下顎で不均衡な状態であり,65を喪失した場合,23と26の間に間隙が生じて審美的・機能的に障害が生じると予想された.また,下顎左側臼歯部は34,35の萌出スペースが不足していた.7歳のときに乳臼歯の永久歯への交換期を迎え,後継永久歯を欠く65の歯根吸収を認めたことから,根未完成歯の34を後継永久歯が先天欠損している65部に自家移植することにした.</p><p> 成績:65を抜歯し,移植床を上顎洞へ穿孔しないように慎重に形成した.歯根未完成の34を歯根および歯根膜を傷つけないように,抜歯鉗子のみで抜歯した.抜歯した34を65抜歯窩に移植し,ナイロン糸にて固定した.移植直後には移植歯の歯根は短く,歯髄腔は根尖方向に向けて大きく開いていたが,3年後には,歯根はほぼ本来の長さまで伸長し,根尖も完成した.移植歯は歯髄電気診に反応し,咬合痛や打診痛などの症状はなく,歯の変色もなく経過した.</p><p> 結論:本症例においては,左側の歯数が上下顎で不均衡な状態であり,下顎左側臼歯部は34,35の萌出スペースが不足していたため,混合歯列期に根未完成歯34を65部へ自家移植した.その結果,左側臼歯部の上下の歯数は均衡を取ることができた.自家移植後約3年を経て歯根はほぼ本来の長さまで伸長し,機能的に問題なく経過しており,混合歯列期での根未完成歯の自家移植が有効な治療の選択肢であることを示していると思われる.</p>
収録刊行物
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- 日本歯科保存学雑誌
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日本歯科保存学雑誌 64 (5), 355-363, 2021-10-31
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390289920609390720
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- NII論文ID
- 130008109347
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- ISSN
- 21880808
- 03872343
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
- KAKEN
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可