治験におけるFair Market Value (FMV)に基づいたベンチマーク型コストの導入と課題

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<p>【目的】医薬品開発においては、世界同時開発戦略に伴い国際共同治験が増加しており、日本の治験費用においてもFMVの概念のもとに費用の「適正化」と「透明性」の確保が求められているが、日本では「ポイント算出表」に基づいた日本独自の治験費用の算定方法が主流であり、各項目に対する解釈や積算方法の違いから、治験の施設費用は医療機関ごとに大きなばらつきがある。一方で、海外ではFMVの概念に沿った治験費用の算出が一般的であり、治験実施計画書で規定された診察、検査およびデータ入力などの各業務に対する対価の基準値(ベンチマーク)を設定し、被験者のVisit毎に実績ベースで治験費用が支払われている。本研究では日本でのベンチマーク型コストの普及に向け、ベンチマーク型コストの仕組みを調査するとともに、治験依頼者と医療機関における導入時の課題を検討した。</p><p>【方法】グローバルで治験費用のベンチマークデータを提供するのは主にIQVIAサービシーズジャパン株式会社とメディデータ・ソリューションズ株式会社の2社である。今回の調査では、ベンチマークデータの根拠となるコストデータの収集からサービス提供に至るまでの仕組みについて、両社の情報を収集すると共に、ベンチマークデータに基づく治験費用の算出方法について概観する。また、日本でのベンチマーク型コストの導入時の課題を検討し考察を行った。</p><p>【結果・考察】どちらのシステムも治験での診察、検査、その他業務のコストデータをタスクごとに抽出し、データとして蓄積している。多数の治験依頼者から情報を収集し、定期的なデータ更新で各国の物価や人件費の上昇等直近の実勢価格が反映される。一方、日本での導入時の課題としては、FMVの概念の定着、医療機関に各業務の費用のデータがない、保険外併用療養費制度の支給外経費に関連する検査・画像診断の取扱いの違い等があった。</p><p>【結論】ベンチマーク型コストを用いた治験が普及するにつれ、個々の治験業務の対価のもとになるベンチマークデータの信頼性は向上し、治験依頼者は医療機関から提示された治験費用が公正な価格か判断できるようになる。結果として施設間の費用のばらつきは小さくなり、治験費用の適正化と透明化につながる。本研究の結果、日本におけるベンチマーク型コストによる治験の実施が治験依頼者だけでなく医療機関にも受け入れられ、FMVによる均質な治験を実施することが可能になるだろう。</p>

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