キトサン-カゼイン複合層を利用した液滴表面修飾によるパーム油滴含有O/Wエマルションの安定性向上

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  • Improved Stability of the Palm Oil-in-Water Emulsion via the Surface Modification of Droplets with a Chitosan-Casein Complex Layer

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抄録

<p>カゼインナトリウムを乳化剤としてマイクロチャネル乳化法で調製したパーム油含有OWエマルションを用いて,半固体油脂からなる油滴の安定性に対するキトサン-カゼイン複合層の効果について検討した.パーム油の融解温度以上である60℃においてクロスフロー型および貫通型マイクロチャネルアレイデバイスを用い,平均液滴径がそれぞれ26.0および33.5μmの単分散エマルションを得た.CHI/SC比を種々変えて油滴表層にCHI-SC複合層の形成を試みたところ,CHI/SC比が0.025以下および2.5以上ではそれぞれ負および正のゼータ電位をもつ単分散油滴が得られた.これらの中間のCHI/SC比では,油滴間の激しい凝集がみられ,エマルションは多分散化した.ゼータ電位が正の値を示す条件では,油滴表層へのCHIの吸着が確認され,カチオン性のCHIと正味電荷が負となるSCの複合層の形成が示された.加熱-冷却処理および長期保存におけるCHI-SC複合層の添加効果を調べたところ,油水界面にキトサン-カゼイン複合層を形成させたエマルションでは,カゼインナトリウムのみで安定化されたエマルションと比較して次のような安定化効果が認められた.すなわち,(1)油相の融解・再固化を伴う加熱・冷却処理における合一を抑制し,エマルションから油相成分が分離しにくくする効果,および(2)室温での長期(7ヶ月)保存において油滴の合一・粗大結晶化を抑制する効果が示された.キトサンとカゼインの複合化による物理的なバリア形成および油水界面を介した物質移動の抑制に起因する結果と考えられるが,その詳細なメカニズムの解明には今後の検討が必要である.固体/半固体油脂を含むエマルション製品においては,加工時における油滴の部分合一や,流通・保存時の結晶生成が品質管理上の大きな問題となる.今回得られた知見および今後のさらなる検討により,固体/半固体油脂製品の安定性向上およびこれに付随する機能性向上に資する可食性高分子の利用技術の開発が期待される.</p>

収録刊行物

  • 日本食品工学会誌

    日本食品工学会誌 22 (4), 105-115, 2021-12-15

    一般社団法人 日本食品工学会

参考文献 (46)*注記

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