効果的なアンサンブル洪水予測情報伝達のためのユーザーとの双方向コミュニケーション

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タイトル別名
  • Two-way communication with users for effective ensemble flood forecast information delivery

抄録

<p>台風など広域に影響が及ぶ場合は,どこで影響が生じ得るかを早期に把握し,事前準備可能な対策を検討できると望ましい.より長期間の洪水予測を行えるアンサンブル洪水予測システムの開発に注目が集まっている.本研究では,予測情報伝達の上での予測者とユーザーとのコミュニケーションという観点から,主に運用中の海外の予測システムに関する文献調査に基づく分析により,早期警報として活用するためのアンサンブル洪水予測情報の有効な伝達方法を検討した.その結果,予測情報の可視化の際に,システム不確実性を考慮し流量等の絶対値からリターンピリオド等の危険度に変換する,危険度予測一貫性を表示するなど,警報発令等の判断を支援する可視化方法を利用していることが分かった.また,アンサンブル洪水予測を新規に運用する中で出現した課題や,その改善例などについて整理した.運用初期段階では,リードタイムが長く,確率的な情報を含み,広域で均一な評価のできるアンサンブル洪水予測手法の特徴・利点に関するユーザー理解が不十分であったため,予測情報を予警報システムに十分に生かし切れなかったことが分かった.また,アンサンブル洪水予測を早期警報として活用するための法整備など予測情報の受け入れ体制の整備不足もシステム運用の障壁となり得ることが明らかとなった.しかしながら運用中の予測システムでは,ワークショップ等を通してユーザーとのコミュニケーションを繰り返すことにより,ユーザーの予測システムへの正しい理解を促し,予測情報伝達に関してユーザー意見を反映させ,制度含むシステム改善を行ってきたことが分かった.例えばイギリスでは,洪水発生時に,洪水予測の精度は実用的なレベルになっていたが, 異なる機関同士の連携不足で予測情報を十分活用できなかったという事例がある.その反省から,気象予報を担う機関と洪水対策を担う機関が連携して新たな機関を設立し,洪水予測情報を整理し伝達している.同機関による予測システムでは,年次ミーティングで得られたユーザーフィードバックを基に,これまでは発出に消極的だった空振りの可能性のある低頻度大規模洪水のアラートが適切に発出されるようになった.予測者とユーザーとが双方向のコミュニケーションを繰り返し,予測情報の伝達に関してシステムの改善を続けることができれば,予測情報を最大限に活用することが期待できることが分かった.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390290559461728896
  • NII論文ID
    130008138070
  • DOI
    10.11520/jshwr.34.0_42
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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