慢性疼痛の神経炎症を中心とした生物学的基盤

  • 藤本 晃嗣
    九州大学大学院医学系学府
  • 細井 昌子
    九州大学病院心療内科 九州大学病院集学的痛みセンター 九州大学大学院医学研究院心身医学

書誌事項

タイトル別名
  • Narrative Review of the Pathophysiology of Chronic Pain with a Focus on Neuroinflammation
  • マンセイ トウツウ ノ シンケイ エンショウ オ チュウシン ト シタ セイブツガクテキ キバン

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説明

<p>器質的疾患を指摘できない慢性疼痛において,近年その生物学的基盤が明らかになりつつある.特に注目を浴びているのが,神経炎症である.視神経脊髄炎スペクトラム障害などの脱髄疾患を中心として神経炎症との関連が明らかになるにつれ,病態に基づいた治療が実臨床に導入されつつある.慢性疼痛においても炎症メディエーターやミクログリアの関与が知られているが,近年グリア細胞の活性をin vivoで評価できる18kDa-translocator protein(TSPO)をリガンドとして用いたPET検査が行われるようになり,病態の解明が進んでいる.また,統合失調症や自閉症スペクトラム障害での関与が疑われているシナプス刈り込みも慢性疼痛の病態形成に関与している可能性がある.遺伝子ビッグデータを用いた研究においても,抑うつ,PTSDや自己免疫性疾患との関連が確認された.近い将来,慢性疼痛の生物学的基盤の理解がさらに進み,臨床的場面で有用なバイオマーカーの開発につながることを期待する.</p>

収録刊行物

  • 心身医学

    心身医学 62 (1), 50-56, 2022

    一般社団法人 日本心身医学会

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