膵臓由来タンパクglycoprotein 2が腸炎の重症化を防ぐ

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抄録

腸内細菌と宿主の相互作用の研究にスポットライトが当たるようになって久しい.しかしながら,腸で起こっていることが腸で完結しているかと思えば,そう単純ではない.最近では腸内細菌が様々な疾患や,脳の機能にまで影響を及ぼすことが知られるようになった.また腸内細菌を正常化させる治療として健常人からの便移植も進められている.しかし,腸内細菌と宿主の相互作用の詳細な分子メカニズムは未解明な部分が多い.クローン病や潰瘍性大腸炎のような炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease: IBD)は腸粘膜バリアの調節不全や腸内毒素症と関係している.特にクローン病患者の腸では,大腸菌の中でも特に腸管侵入性大腸菌が多く存在し,IBDの悪化に関わっている.また,急性感染性胃腸炎において腸管侵入性大腸菌が付着すると,クローン病を誘発するリスクが高まる.さらに,腸管侵入性大腸菌は免疫による除去が難しく,この大腸菌が感染したマクロファージは炎症性サイトカインの腫瘍壊死因子(TNF)を大量に産生し,クローン病を悪化させる.今回,膵臓から分泌されるタンパクglycoprotein 2(GP2)が腸内細菌の腸管への侵入を防ぎ,IBDを抑制することが明らかにされたので紹介する.<br>なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.<br>1) Morais L. H et al., Nat. Rev. Microbiol., 19, 241-255(2020).<br>2) Kurashima Y. et al., Nat. Commun., 12, 1067(2021).<br>3) Terahara K. et al., J. Immunol., 180, 7840-7846(2008).<br>4) Hase K, et al., Nature, 462, 226-230(2009).<br>5) Martin-de-Carpi J. et al., Front. Pediatr., 5, 218(2017).

収録刊行物

  • ファルマシア

    ファルマシア 58 (1), 64-64, 2022

    公益社団法人 日本薬学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390290617368043008
  • NII論文ID
    130008138953
  • DOI
    10.14894/faruawpsj.58.1_64
  • ISSN
    21897026
    00148601
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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