関節の可動性を保持した甲殻類のポリエチレングリコール含浸標本の作製

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タイトル別名
  • Preparing PEG-impregnated crustacean specimens that retain the joint flexibilities
  • カンセツ ノ カドウセイ オ ホジ シタ コウカクルイ ノ ポリエチレングリコール ガンシン ヒョウホン ノ サクセイ

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抄録

生物標本はその作製法によって研究への利用法や管理方法が大きく制限される.甲殻類の標本は従来,乾燥標本や液浸標本が主要な標本作成法となってきた.しかし,前者は組織が乾燥することで各関節を動かすことができなくなる点,後者は色素の分解が起こる点や固定液の管理が面倒な点がそれぞれ標本管理や利用における問題点として挙げられる.本報告ではこれらの問題を解消するべく,新たな標本作成法として,低分子ポリエチレングリコール(PEG)含浸標本の作製法を提唱する.甲殻類の冷凍標本を一度10%ホルマリン溶液で固定した後,低分子PEGで含浸し,その後乾燥させた.この方法で作成した甲殻類標本は,関節膜や腱の柔軟性が失われないため,関節の可動性が保持された.また,密封容器に入れる必要がないため,収蔵スペースの節約においては液浸標本に勝り,乾燥標本と同等であるといえる.なお,標本作成後一年間が経過したが,PEG含浸処理後の色抜けは起こっていない.本手法は今後の甲殻類の保存方法のひとつとして有効活用していくことが期待される.

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