所得の人的帰属 : 個人法人間の帰属の判定を中心として(上)

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  • A Study of Attribution of Income : Individual or Corporation? (1)
  • ショトク ノ ジンテキ キゾク : コジン ホウジンカン ノ キゾク ノ ハンテイ オ チュウシン トシテ (ジョウ)
  • ショトク ノ ジンテキ キゾク : コジン ホウジン カン ノ キゾク ノ ハンテイ オ チュウシン ト シテ(ウエ)

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抄録

本論文は、所得の人的帰属(以下、「帰属」という)について研究を行うものである。帰属は、課税要件の1つである。課税要件とは、納税義務が成立するための要件であるが、具体的には、その充足によって納税義務の成立という法律効果を発生させる法律要件のことをいう。課税要件には、主として、納税義務者、課税物件、帰属、課税標準、そして税率の5つがある。本論文の対象である帰属とは、納税義務者と課税物件の結びつきのことをいう。所得の帰属に関しては、所得税法12条がある。同条は、「資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であって、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する者に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。」と規定し、いわゆる実質所得者課税の原則を定めている。法人税法11条にも、同様の規定が設けられている。この規定の捉え方については、法律的帰属説と経済的帰属説の2つの考え方があり、現在では法律的帰属説が通説の地位を占めている。しかし、最高裁の立場は必ずしも明らかではなく、また、法律的帰属説または経済的帰属説のいずれかの考え方を支持すると述べている論者の中でもそれぞれの見解が一致していない。さらに、実質所得者課税の原則に関する過去の裁判例は、そのほとんどが法律的帰属説か経済的帰属説かという検討は行わず、事実認定をしている。そのため、実質所得者課税の原則の適用においては、非常に難しい判断が要求されることになる。この点で、実質所得者課税の原則は、税法の中でも特に難解な条文である。過去の裁判例では、親子や親族間での共同事業における事業所得の帰属主体が争われたケースや、法人とそのオーナーや実質経営者である個人との間で帰属主体が争われたケースなどがある。特に、後者は、法人として設立されている会社の経済活動に対して、その実質を検討した結果、個人に帰属するとして所得税が課されてしまうと、法人格を否認されるに等しい課税になる危険が生じる。納税者からすれば法人の独立性を否定されるのと同じだからである。このような問題について、近時、裁判所の判断が分かれた事案があった。本論文では、この事案を素材としながら、所得の帰属においてこれまで争われてきた判例についても整理・検討を行い、個人法人間における実質所得者課税の原則の適用のあり方およびその具体的な基準を明らかにした。

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