乳児をもつ母親への育児教室の効果と保健師の関わり : 盛岡市及び矢巾町の育児教室を通して

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  • ニュウジ オ モツ ハハオヤ エ ノ イクジ キョウシツ ノ コウカ ト ホケンシ ノ カカワリ モリオカシ オヨビ ヤハバチョウ ノ イクジ キョウシツ オ トオシテ

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抄録

近年、少子化への危機感から、また育児不安の対応策として、保育分野を中心に育児支援策がさまざま打ち出されてきている。しかし、育児における母親の心身の負担の大きい乳児期は、子育て支援として利用できるものは限られているし、育児支援機関の代表とも言える保育所に入所している割合も少ない。その点、支援に力を発揮しているのは、母子健康手帳の交付や検診などで、相談のあるなしに関わらずだれでも接触できる、保健分野の機関である。  増大する育児不安に、厚生労働省も「健やか親子21」検討報告1)の中で、画一的な保健指導体制を見直し、「市町村の乳幼児の集団健診を、疫病・障害の早期発見だけでなく、親子関係・親子の心の状態の観察ができ、育児の交流の場として、話を聞いてもらえる安心の場として活用する」と報告している。しかし、盛岡市をみても、乳児健診は個別健診に移行しており、「育児の交流の場」としては期待できない。その点、育児教室は、乳児期の子どもをもつ母親全てに開かれた事業であり、「交流の場」としても対応可能である。  筆者が平成13年調査2)した盛岡市の育児教室「すくすく学級」では、母親同士の交流が活発で、活気あふれる母親たちの姿がみられた。また、ヘルスプロモーションのキー概念の一つ、エンパワメントの観点からも、育児教室や健診にグループアプローチを導入して、母親同士「共感:共有」を体験し、「自己決定」「自己効力感」などを高めたという報告3)もある。しかし、エンパワメントは長期的で総合的な支援型アプローチが必要とされていることから4)、1回ないし数回の育児教室(交流)で、母親がどんな影響を受け活気をもたらすのか効果について疑問がある。また、交流をプログラムに入れることによって、育児の知識・技術を伝達する時間が減る。それが保健教育としてどの程度効果が期待できるのかも疑問としてあげられる。  本研究は、育児教室に参加する母親が、育児環境や参加する動機の違い、参加回数やプログラムの違いによって何を得、どんなことが支えとなり母親の力になっているのか知ることが目的である。そして、母親が、他人との関わりを通じてより良い育児環境を自ら創り出そうとするのに、育児教室がどのような意味を持っているのか考える手だてにしたい。

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