家計の資産選択の地域分析 : なぜ都市住民は地方に比べてリスクが取れるのか?

書誌事項

タイトル別名
  • An Analysis of Housing Liquidity and Household Portfolio : An Urban-rural Comparison
  • カケイ ノ シサン センタク ノ チイキ ブンセキ : ナゼ トシ ジュウミン ワ チホウ ニ クラベテ リスク ガ トレル ノ カ?
  • カケイノシサンセンタクノチイキブンセキ ナゼトシジュウミンハチホウニクラベテリスクガトレルノカ?

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抄録

本論文は,都市住民の有価証券(リスク金融資産)への投資の多さを,都市における住宅資産(中古住宅)の流動性の高さにあると仮定し,理論と実証の両面から検証するものである。  まず,理論モデルをベースとした数値シミュレーションの結果からは,住宅資産(中古住宅)の流動性が高い(すなわち,住宅資産の売却が容易になる)ほど,家計によるリスク金融資産への投資が多くなることが確かめられた。理論モデルの本質は,住宅資産(中古住宅)を考慮した資産選択の行動が可能か否かであり,地方のように,住宅資産の活用が容易ではない(すなわち,住宅資産の流動性が低い)とき,家計は流動性が高く,元本が保証された預貯金偏重の資産選択の行動を取る。  そして,都道府県のマクロデータを用いて実証分析を行ったところ,理論モデルの含意が示すとおり,住宅資産の流動性の高い都道府県ほど,家計によるリスク金融資産の保有が多いことが確かめられた。住宅資産の流動性が高い都市では,家計は住宅資産を含めた資産選択の行動が可能となり,都市住民のリスク金融資産の保有やその投資量の多さは,住宅資産の流動性の高さが一因となっていると言えるだろう。  約1500兆円の金融資産を保有する家計を証券市場に促すためには,多くの家計が保有する住宅資産が重要な鍵を握る。住宅資産の流動性を高め,家屋を含めた住宅資産の正当な評価を可能とする中古住宅市場の整備が必要である。

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