油症患者におけるFBRA 摂取による油症原因PCDFs同族体の体外排泄促進

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  • Excretion of Causative PCDFs Congeners of Yusho by One Year Intake of FBRA in Patients with Yusho

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抄録

カネミ油症中毒事件が発生してから38年が経過したが,今でも油症患者は種々様々な自覚および臨床症状で苦しんでいる.このような症状を改善し治療するには,その主要な原因物質であるポリ塩化ダイベンゾフラン(PCDFs)を積極的に体外へ排泄し,汚染レベルを低下させることが第一である.この研究では動物実験によりダイオキシン類の体外排泄促進作用が認められている食物繊維と葉緑素を比較的多量に含む栄養補助食品FBRA(発酵玄米栄養補助食品ハイ・ゲンキ,㈱玄米酵素,本社:北海道札幌市)によるカネミ油症原因物質,中でも特に重要な2,3,4,7,8-五塩化ダイベンゾフラン(2,3,4,7,8-PenCDF),1,2,3,4,7,8-六塩化ダイベンゾフラン(1,2,3,4,7,8-HxCDF)および1,2,3,6,7,8-六塩化ダイベンゾフラン(1,2,3,6,7,8-HxCDF)の体外排泄促進を18名の油症患者の協力により調べた.研究期間は2年間で,患者の希望によりA,B 二群に分け,A 群は最初の1年間,B 群は2年目の1年間,毎食後7.0~10.5g のFBRA を摂取した.A 群は10名(男性3名,女性7名)で,平均年齢が67.7歳,B 群は8名(男性4名,女性4名)で,平均年齢が64.1歳であった.研究を始める前の血中PCDFs同族体の平均濃度はA 群が2,3,4,7,8-PenCDF ; 1.36pg/g,1,2,3,4,7,8-HxCDF ; 0.491pg/g,1,2,3,6,7,8- HxCDF ; 0.150pg/g で,B 群が,それぞれ0.571,0.159,0.064 pg/g であった.A 群のほうが,2~3倍高かった.研究開始1年後と2年後にも両群の血中PCDFs同族体濃度を測定した.これらの測定結果より,血液の脂肪含有率を0.3%として,脂肪重量当りの濃度を算出した.この濃度で患者体内の脂肪組織が汚染されており,体重60kg の患者について,体脂肪率を20%と仮定して,これらのPCDFs同族体の体内蓄積量を算出する.そして,この体内蓄積量がFBRA 摂取と非摂取の期間でどのように変化するかを,両群で比較検討した.A 群の場合,すべてのPCDFs同族体でFBRA 摂取期間のほうが非摂取期間よりも減少量が多く,平均純減少量は患者一人当り2,3,4,7,8-PenCDF が120ng,1,2,3,4,7,8-HxCDF が372ng,1,2,3,6,7,8-HxCDF が96ng であった.B 群では2,3,4,7,8-PenCDF のみ,36ng 減少したが,他の二種の同族体では体外への排泄促進は認められなかった.以上の結果より,FBRA には油症の原因となったPCDFs同族体の体外排泄促進作用が認められ,その効果は汚染レベルの高い患者でより有効と考えられた.

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