林業賃金の男女格差

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  • Salary and wage gap between men and women in Japanese forestry
  • リンギョウ チンギン ノ ダンジョ カクサ

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抄録

林業におけるジェンダー問題は存在しないようで根深く残されている.その一つが男女の給与格差,賃金格差として示される.既存の研究では,男女は一括した林業労働者であり,女性を抜き出して研究するという意識は皆無に等しかった.その理由として,男女を区別した林業統計が無かったことも影響しているであろう.本稿で述べているように,林業における男女の給与,賃金の差は依然として存在する.それを主に森林組合を対象にした分析によって明らかにした.森林組合における専従職員の場合,女性の給与が男性の給与に近づきつつある.しかし,経営規模によってその動きは異なる.例えば,少人数の組合では女性職員の勤務年数が高くなる傾向があり,しばしば男性の給与を超える.しかし,経済力を強化しなければ経営が困難になりつつあり,合併が求められる.一度規模が大きくなると職制を強化せざるを得なくなる.職制は男性の管理職登用を広め,相対的に女性の地位を低くめる.結果として男女の給与に格差をもたらす.だが,森林組合においても,工場管理やシステムエンジニアあるいは消費者との接触など新たな分野が開けつつあり,女性の活躍が期待される.それに対応できるような教育体制が必要である.他方,現場労働者の場合,賃金は雇用形態や賃金形態に依存することが多く,正確にその動向を確認することはできない.しかし,男女の比較という点では,基本的に男女の賃金格差はあまり変動をしていない.おおむね屋外労働者の軽作業における男女の賃金格差や農村における「臨時雇」における賃金格差と横並びにあり,70%台を上下している.しかし,森林組合によっては,男女同一の賃金が支払われなど,特異的な動きも無いではない.こうした動きの中で適切な労働評価をした上で男女の賃金が決定されることを期待したい.

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