九州のマテバシイ林で計測された土壌水分減少による樹液流速の低下

  • 小松 光
    九州大学大学院農学研究院森林資源科学部門森林生態圏管理学講座
  • 片山 歩美
    九州大学大学院農学研究院森林資源科学部門森林生態圏管理学講座
  • 久米 朋宣
    九州大学大学院農学研究院森林資源科学部門森林生態圏管理学講座
  • 大槻 恭一
    九州大学大学院農学研究院森林資源科学部門森林生態圏管理学講座

書誌事項

タイトル別名
  • Sap-flow velocity reduction by soil water deficit observed in a Lithocarpus edulis forest on Kyushu Island, Japan

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抄録

本論は,九州のマテバシイ林で計測された土壌水分減少による蒸散低下を調べたものである。蒸散の変化を観測するために森林内の6本の樹木において樹液流計測を行ったところ,2003年9月下旬から10月下旬にかけて樹液流速の低下が認められた。この期間は降水量が少なかったために,土壌マトリックポテンシャルが低下していた。樹液流速の低下は,深度10 cmの土壌マトリックポテンシャルが-70 kPa以下のときに顕著であった。大気飽差が1.0 kPaのときの樹液流速は,土壌マトリックポテンシャルが-70 kPa以下のとき,土壌マトリックポテンシャルが-70 kPa以上のときに比べて42%低下していた。樹液流計測に加えて単葉スケールでの樹木生理計測を,土壌マトリックポテンシャルの異なる2日を選んで行った。その結果,単葉の蒸散量と気孔コンダクタンスは,土壌マトリックポテンシャルが低い日において小さかった。このことは,土壌水分減少が気孔の閉鎖を引き起こし,その結果,樹木の蒸散が低下したことを示唆している。樹液流速と水ポテンシャルの関係から,土壌マトリックポテンシャルの低下による幹の通水コンダクタンスの低下は認められなかった。

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