乳児リンパ球細胞の姉妹染色分体交換頻度への授乳による農薬の影響

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  • Frequency of SCEs in Japanese Infants Lactationally Exposed to Organochlorone Pesticides

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抄録

総合的で鋭敏な遺伝毒性指標として知られている姉妹染色分体交換(Sisterchromatid exchanges,SCEs)頻度を用いて, 授乳によるHCHs, DDTおよびクロルデンへの曝露と乳児リンパ球細胞のSCEs頻度との関係を数理統計学的に調べた. リンパ球細胞の培養中に溶媒(DMSO)のみ処理したコントロール群のSCEs頻度すなわちSCEcontro1(中央値,最小値~ 最大値,以下同様) は8.0/細胞, 6.5~12.4/細胞, 7,8-ベンゾフラボン(ANF)処理した場合のSCEs頻度, SCEANFは11.8/細胞, 9.1~15.6/細胞, また両者の差SCEANF-SCEcontrol, △SCEsは3.9/細胞, 0.2~7.2/細胞であった. 母乳からの有機塩素系農薬の摂取量は次のようである. HCHs;341mg/kg 体重, 43~1449mg/kg 体重, DDT;272mg/kg 体重, 33~1361mg/kg 体重, クロルデン;69mg/kg 体重, 13~379mg/kg 体重.クロルデンの授乳による曝露量は中央値で比較するとHCHsとDDTの4分の1から5分の1程度と少なく, SCEs頻度との関係も認められなかった. 一方, HCHsとDDTについては母乳からのこれらの農薬の摂取量が増加するにつれて有意ではないけれどもSCEcontrolが上昇し, 逆にSCEANFが減少する傾向が観察された. その結果, いずれの農薬でも△SCEs頻度の有意な低下が認められた. このようなSCEsへの影響が臨床上どのような意義があるのか不明であるが, HCHsやDDTへの授乳期の曝露が次世代に対して何らかの遺伝毒性作用を及ぼす可能性が示唆されたのであり, 今後, さらに詳細な研究が必要である. また同様の結果は母乳からのダイオキシン類への曝露でも観察されているが, SCEsへの影響は細胞分裂のS期依存型遺伝毒性物質とみなされ, この視点からの研究も重要である.

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