細胞診断学の現在,過去,未来

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タイトル別名
  • The Past, Present and Future of Cytology
  • サイボウ シンダンガク ノ ゲンザイ カコ ミライ

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抄録

細胞診断学(以下細胞診)(Cytology)とは,細胞をスライドガラス上に塗布し,固定・染色後,顕微鏡で観察し,病態の診断を行う検査である.現在その染色法でも主流なのが,パパニコロウ染色である.この染色法は,従来の染色法と比較し,細胞の状況により多色に染め分けられるという点で画期的なものであった.考案したのは,アメリカに移住したユダヤ系ギリシャ人のGerge Nicholas Papanikolaou(1883-1962)という解剖学者である.細胞診のバイブルと言われる『Atlas of Exfoliative Cytology』が彼によって刊行されたのは1928年のことだった. Virchow以来の病理組織学が,細胞学的異常よりは組織構造の異常を重視した客観的診断基準を確立したのに対し,細胞診は個々の細胞の形態異常を診断の拠りどころとしていたため,多くの批判を浴び,約30年間は苦難の歴史であった.しかし,1950年代に入って,その簡便性から癌の住民検診や集団検診で早期検出法として活用されるにしたがい,欧米の多くの臨床病理学者がひとしく細胞診の価値を認識するようになった.診断法としての根拠は組織診断に比較するとやや脆弱な面はあるが,熟練した細胞診専門医や細胞検査士の経験と洞察力は,まさに職人芸であった.臨床検査法として実際的価値にささえられて発展してきたと言うことができる. とはいえ,細胞診の価値は,癌の確定診断というよりは,病変が存在すれば,そこから癌細胞を捉える確率の高さにあることは言うまでもない. 本論文では,まず,細胞診の歴史にふれ,次に我々の研究を紹介し,最後に細胞検査士教育および今後の展望について述べる.

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